厚生労働省は7月22日、市町村職員を対象とするセミナー「地域包括ケアシステム構築に向けた取り組みについて」を開催し、地域包括ケアの先進事例に取り組む自治体職員らが発表を行ったほか、一般社団法人「24時間在宅ケア研究会」の時田純理事長と、NPO法人「全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会」の山越孝浩事務局長が講演した。
24時間在宅ケア研究会の時田理事長は、夜間対応型訪問介護の課題として、通常の訪問介護との違いなど、自治体による理解が進まず、全国14県で実施されていないこと、一般に高齢者の夜間の在宅生活の危険性が理解されていないこと、緊急時訪問介護加算が設けられたことで、月額利用料のかかる夜間訪問型介護が敬遠されていることなどを指摘した。
その解決策として2つを提案した。1つ目には「24時間型訪問介護」と名前を変更して、居宅介護支援と同様に基本サービスを無償とし、「定期巡回」については、包括報酬に「随時訪問」のみの出来高払いにすること。
2つ目として、現状の滞在型中心の訪問介護では随時サービスが行われないため、状態が重くなると施設への入所を選ばざるを得ない。これを解消するには、24時間巡回型訪問介護に転換を図る必要があるのではないか。まずは、人口20万程度の都市で利用対象者を300人程度と想定する。
時田理事長は、地域包括ケアシステム実現のためには、「365日・24時間型緊急通報と夜間巡回を含む訪問介護の見守り体制の整備が必要」と強調する。
全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会の山越事務局長は、今までのケアは、人ではなく、排泄、食事、入浴といった介護が中心になっていたことを指摘。これからのケアは、「24時間365日連続する支援により、地域社会の中で暮らすこと。人の生活、人生、暮らしが中心になるべき。これまでの暮らしと、介護が必要な暮らしとの連続性を重視しなくてはならない」と訴えた。
さらに、「自宅と事業所での生活の落差を小さくする必要がある」として、「事業所に宿泊して一晩におむつを何回も交換してもらっていた場合、自宅に戻って同じように夜間のおむつ交換をするのは家族に負担がかかりすぎるし、回数が減れば本人が苦痛に感じる」という“落差”の悪循環が起こることにも言及した。
小規模多機能居宅介護事業では、本人が自宅と身近な地域で暮らしながら、必要な介護を受けることができる可能性がある。「行政の方には、これからの介護のあり方、これからの町のあり方を見据えて、小規模多機能型居宅介護を活用して、育ててほしい」と訴えた。