厚生労働省は7月22日、「第2回介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」を開催し、たんの吸引、胃ろう処置を介護現場で行う際の対象職員や実施行為の範囲などが検討された。
介護職員が行える行為の範囲は、たんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻)を基本とし、対象職員は「ヘルパー」と「介護福祉士」に限定するとの案がまとめられたが、処置を行うための資格化は留保された。
その他の詳細は7月29日に開催される次回会議に持ち越された。
また開会時には、山野井厚労政務官が、7月に行われた参議院選挙で与党が過半数を下回り、国会が衆・参議院で「ねじれ」の状態となることに触れ、「年金・医療・介護など予算案成立に不安の声も聞かれるが、本検討会は非常に重要なもので党派を超えて取り組んでいく」と挨拶した。
出席委員からは、たんの吸引や経管栄養を実施する対象施設や研修の場などの意見書が提出された。聖隷クリストファー大学教授の川村佐和子委員は、在宅でのたんの吸引について訪問看護師がヘルパーにどう指導したか3カ月半にわたる調査結果を示した。
それによると退院日の訪問看護は6時間、退院後1カ月は週6日、1日平均約3時間半を要した。川村委員は「介護職員に吸引手技・知識の指導を事前に行っていても、“たんが固く吸引がうまくいかない”とヘルパーから訪問看護師に連絡があった」と述べ、訪問看護師の複数回訪問や同行訪問、介護職員への個別指導で対応したと報告した。
吸引処置を受けながら出席したNPO法人さくら会理事長・日本ALS協会副会長の橋本操委員は、「私の経験からすると退院時の訪問看護が手薄。圧倒的に訪問看護の数が足りない。施設では10人の経管栄養を行うのに訪問看護師1人で30分ですむが在宅なら10時間はかかる。そのマンパワーが確保できるのか」と代理人を通じて発言した。
日本看護協会常任理事の齋藤訓子委員日は、全国の市町村の約3分の1に訪問看護ステーションが設置されておらず、訪問看護と介護の随時連携が困難であるとして早急な整備を求めた。
日本介護クラフトユニオン会長の河原四良委員は、組合員に実施したアンケート結果を示し、約半数が利用者からの依頼で医療行為を実施しており、そのうち、たんの吸引・経管栄養が3割ほど行われ“不安になった”と答えた人も3割を超えていたことから「知識・技術の研修がないのだから不安を感じて当然。施設であっても在宅であってもしっかりと研修を行うことが重要。そのうえでなら医行為を介護職員に拡大していくことに賛成だ」との見解を示した。
◎――検討会レポート2へ続く
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