<セミナーレポート>100歳以上で生活自立している人は18%。「何より食べ過ぎないこと!」ー都医学研講座

都医学研究会は、6月4日、平成26年度第2回都医学研都民講座「アンチエイジングと長寿の秘訣」を開催した。講師は多方面で活躍している順天堂大学大学院加齢制御医学講座の白澤卓二氏。

白澤氏は最初に、昨年、80歳でエベレスト登頂を果たした三浦雄一郎氏と、122歳と世界最高齢だったフランス人女性カルマンさんを紹介した。

■長寿サクセスフルエイジングを目指して
エベレスト山頂は通常の成人であれば5分と生命が維持できないほど過酷な場所。三浦氏は登頂しただけでなく、60分もの作業をするだけの体力を持っていた。また、カルマンさんは40代のときに外見は20代にしか見えず、85歳でフェンシングを始めたというように老化の進行のが普通の人よりもかなり遅く、120歳の写真でも顔のしわが少なく、受け答えもはっきりとしていた。同窓会でクラスメートの老け方に差があるのは誰しもが感じることだろう。

日本人の寿命は延びたが、ただ長く生きていればいいということではなく、これからは長生きするよりも、質の高い人生を送ることができるかが問われる時代。日野原重明先生のようなサクセスフルエイジングを送れるかどうかを考えていくことが必要だ。現在日本には100歳以上の人が約5万人いる。そのうち、自分の足で歩けて、頭で判断できる生活自立をしている人は18%にすぎない。その18%に入るために有効なことは実にシンプルで、「食事」「運動」「生きがい」の3つに尽きる。

■食事の仕方を見直す
老化のスピードは24時間以内に食べたカロリーが決め手になっている。「食べ過ぎ」は老化の進行を速め、骨粗鬆症、認知症、がん、脳卒中心臓病などのリスクを高める。アメリカでの研究によると、栄養素は確保しつつ、野菜などカロリーの少ないものは制限せずに、カロリーがあるもの(炭水化物・たんぱく質・脂質)を70%に制限したアカゲザルが17歳(人間換算70歳)でも、髪の毛につやがあり、皮膚も若々しく、細胞レベルにおいても活性酸素による損傷が少なく、動脈硬化のリスクも小さかったという。まさに、昔から言われている「腹八分目」は理にかなっている。

老化のスピードを遅らせるには体のさびつき(酸化)を予防することが大事で、抗酸化作用がある植物性ファイトケミカルはしっかり摂りたい。また、多くの市販のパンやお菓子にはアメリカ産の小麦粉が使われているが、ふわっとした食感に品種改良されており、太りやすいので要注意だ。

食べ方として気をつけたいのは、「血糖値が上昇しにくい食品を摂ること」。主食は白米・食パン・うどんよりも、玄米・全粒粉のパン・そばを。野菜ならじゃがいも・かぼちゃ・にんじんよりもさつまいも・トマト・ブロッコリーを、果物ならぶどう・バナナ・すいかよりもイチゴ・りんご・グレープフルーツを。お菓子ならアイスクリーム・せんべい・果物ジュースよりも、牛乳・ヨーグルト・ココアなど。

「食べ過ぎないこと」を毎日続けるのはむずかしい。もしかしたら、60年間実践できる人が18%なのかもしれない。そこでおすすめしたいのが4つのコツ。「カロリーの少ない野菜や海草から食べる」「口に入れてすぐ無くなるものだけでなく、1口30回噛める献立にして時間をかけて食べる」「朝食を抜かずに、インスリンの分泌を活発にするものを食べる」「食べ放題、飲み放題の店に入らない」という4つのコツを心がけてみてほしい。

認知症を予防するには? 
まずは、毎食よく噛むこと。1回20分3食、1日合計60分、60年間、噛んでいる間はずっと前頭葉が刺激されて認知機能の維持が図れる。やっていた人とやらない人では大きな差が開く。

朝食には野菜ジュースを。アメリカの研究によると、週3回以上野菜や果物ジュースを飲む人は、週1回未満の人に比べてアルツハイマー病の発症リスクが76%と大幅に低下し、週1~2回飲用する人は16%の低下があった。市販よりも自分で作るのが一番。ジューサーよりもミキサーを使ったほうが食物繊維が摂れる。リンゴは洗剤で洗って農薬を取り除き、皮ごと入れる。ブロッコリーも慣れると生で飲むことができる。

朗報として紹介したいのが「ココナツオイル」。アルツハイマー病の改善に効果がある食品として注目されている。若年性認知症の患者がオートミールに大さじ2杯入れて食べたところ、4時間で認知機能テストの成績が上がったという報告がある。効力は数時間で減ってしまうので、その患者は1日3食摂ることで、数年にわたって認知機能が維持されている。

脳の中の神経幹細胞は刺激が入れば入るほど新しく作られる。アルツハイマー病になると海馬の萎縮 神経幹細胞が萎縮してくる。そうならない前に神経幹細胞を増やすことができれば、認知機能低下に歯止めをかけることができるだろう。脳に刺激を入れる環境づくりとしては、この会場から出たら電車に突進しないこと。周りに気を使う行動をとると脳に刺激が入ってくる。

以上、講演は終始、実例を織り交ぜ、ユーモアを交えながらの語り口で、受講者はわが身を振り返りつつ、すぐにでもアンチエイジングに取り組む気持ちにさせられたのではないか。最後に「3日坊主にならないためには、時々本屋に行って、私の新刊本を読むことをおすすめする」と締めくくった白澤氏。これまでにも数多くの著書を出してきた。それも脳への刺激になるに違いない。アンチエイジングの実践は要介護者を減らす手立てとなるわけで、寝たきりにならないためのサクセスフルエイジングを伝えていくことが介護予防の観点からも有効だろう。

◎順天堂大学大学院加齢制御医学講座
http://www.shirasawa-acl.net/

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