名古屋大学 環境医学研究所の澤田 誠教授らの開発チームは、5月20日、アルツハイマー病関連物質のマウス脳内での3次元分布状況を測定することに成功したと発表した。
アルツハイマー病の発症の原因物質の可能性が高いとされるアミロイドβは、「単量体」が凝集すると水に溶けにくい繊維形状の「重合体」になり脳に沈着する。この単量体と重合体の分布状況を把握することで、アルツハイマー病の発症メカニズムの解明や治療薬の開発に貢献できると考えられるが、これまで脳内における3次元分布を測定した例はなかた。
今回開発チームは、アルツハイマー病のモデルマウスの脳から連続した層状の組織片を切り出し、その上の複数のポイントをレーザーと熱溶融フィルムを用いて格子状にサンプリングし、それぞれについて質量分析を行った。この工程を各層で繰り返し、測定データを正確に再構成することで3次元の分布状況が分かる技術を確立した。この技術により、アルツハイマー病のモデルマウスの脳内ではアミロイドβの単量体と2量体の空間分布が異なることが世界で初めて検出。今後、さらに詳細な観察を行うことで、アルツハイマー病の発症メカニズムに迫っていけると期待される。
この技術は、広く普及している質量分析装置を利用して測定できるので、創薬・医学を始めとする多くの分野の研究開発に活用されることが考えられる。
◎科学技術振興機構
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