公益財団法人東京都医学総合研究所は、徳島大学、名古屋大学らとの共同研究によって、細胞内に存在する小さなタンパク質が、遺伝性パーキンソン病の発症を抑えるために働く分子であることを世界で最初に明らかにした。
今回の研究は、これまで誰も予想だにしなかった全く新しい発見であり、純粋に基礎科学の成果として大変に重要な発見であると同時に、医療の場面においてパーキンソン病の早期診断法として新たな開発に寄与することが期待される。
パーキンソン病は、神経伝達物質であるドーパミンを産生する神経細胞が失われることにより、安静時のふるえや歩行障害(すり足、小股、前屈姿勢など)、姿勢保持障害(例えば歩き出したり後方に引かれたりすると、止まれずに突進してしまう)、動作緩慢(動きが遅くなったり少なくなることで、細かい作業が困難になる)など様々な運動障害が起こる。病状が進行すると自律神経障害、記憶力低下などの認知機能障害、幻視やうつなどの精神症状が表れることもあり、最終的に自立した生活が困難になり、車いすや寝たきりの生活になる危険性がある。
また、日本国内だけでも15万人を超える患者がいる難治性の神経変性疾患であり、また高齢者ほど患者数が多く、65歳を超えると1%以上の人が罹患するといわれている。社会の高齢化が進むにつれて患者数は増え続けており、病気が発症する仕組みの解明と、早期診断法や根本的な治療法の確立が社会的に強く求められている。
今回の研究は、新しいパーキンソン病の病理解析ツールや診断マーカーの開発につながる発見であると考えられる。将来的にはパーキンソン病の治療薬のスクリーニングへの応用も期待される。