東京都社会福祉協議会は、平成22 年に設置した「退院後、行き場を見つけづらい高齢者への支援の構築プロジェクト」で、退院後における高齢者の社会資源の利用実態を明らかにするとともに、既存の社会資源の「中間的な機能」(退院後、一時的にいることができ在宅生活へのシミュレーションができる機能)の可能性を探ることを目的として、アンケート調査を行った。
この調査は、退院後における高齢者の社会資源の利用実態を明らかにするとともに、既存の社会資源の中間的な機能の可能性を探ることを目的とし、都内の介護老人保健施設、介護療養型医療施設、医療療養病床、有料老人ホーム(特定施設)、サービス付き高齢者向け住宅、認知症グループホーム、小規模多機能型居宅介護、宿泊デイを対象に実施。
今回はその結果の概要を紹介する。
■老健では退院ケースの3割が「とりあえずの退院」
調査では、在宅生活を経ずそのまま社会資源を利用した「退院受入れケース」353 ケースを収集し分析をした。この353 ケースについて、退院後に介護老人保健施設を利用した理由を聞いたところ、介護老人保健施設では「退院先が決まらず、とりあえずの退院先として」と回答した方が32.3%となった。病院を退院し、介護老人保健施設に入所する3人に1人は退院先が決まらない「とりあえずの退院」ケースと言える。
■本人と家族の意向が大きく違う
退院受入れケースで社会資源を利用中の高齢者について、本人の希望と家族の希望を(担当者に)聞いたところ、全ての社会資源で本人の想いと家族の想いに開きがある結果となった。本人は「自宅希望」を望み、家族は「施設希望を望む」と回答している。また、先の「とりあえずの退院」ケースではこの傾向がより顕著となっており、退院支援における本人と家族の意向を調整する仕組みづくりが必要となっていると考えられる。
■入所・利用を断る理由は「医療対応が困難なため」
社会資源が入所や利用を断るときの内容について聞いたところ、全ての社会資源で「医療対応が困難なため」が最も多くなった。特に、介護老人保健施設では、95.5%が入所を断る理由に挙げている。介護老人保健施設に入居中は、必要な薬代などを介護老人保健施設が独自で払わねばならない制度上の理由があり、医療対応が必要な高齢者を受け入れにくい環境があるためと考えられる。
◎社会資源実態調査報告書
http://www.tcsw.tvac.or.jp/pdf/chousa/20130329findings.pdf