厚生労働省は、4月2日、人生の最終段階における医療に関する意識調査の結果を発表した。
同省では、2008年3月に終末期医療に関する意識調査を実施、その調査結果を踏まえて終末期のあり方を決定する際のプロセスや、終末期医療体制の整備と医療福祉従事者に対する知識の普及などを検討してきた。
今回の調査は、前回調査から5年がたち、一般国民の認識やニーズ、医療提供状況などが変化していることを受け、患者の意思を尊重した望ましい人生の最終段階における医療のあり方の検討に生かすことを目的に、国民、医師、看護師、施設介護職員、施設長を対象に2013年3月に実施した。
調査の概要と主な調査の結果は以下のとおり。
【調査の概要】
■調査時期:2013年3月
■調査の対象:
一般国民(以下国)、医師(以下医)、看護師(以下看)、介護老人福祉施設の介護職員(以下介)、計1万8,800人
自身の死が近い場合、受けたい医療や受けたくない医療について家族と話し合いをしているかどうかを質問したところ、「まったく話し合ったことがない」と回答した者の割合が高かったのは一般国民で、半数を超えた。
(国55.9%、医42.8%、看32.6%、介47.6%)
自分で判断できなくなった場合に備えて、どのような治療を受けたいか、あるいは受けたくないかなどを記載した書面をあらかじめ作成しておくことについては、すべての対象者で「賛成である」と回答した者の割合が高く、とくに看護師と介護職員では8割を超えた。(国69.7%、医73.4%、看84.7%、介83.8%)
しかし、書面の作成に賛成と回答した者のうち、実際に書面を作成している人は少なく、もっとも多い医師でも5.0%に過ぎなかった。
(国3.2%、医5.0%、看3.5%、介3.5%)
自分で判断できなくなった場合に備え、どのような治療を受けたいか、または受けたくないかなどを記載した書面に従って治療方針を決定することを法律で定めることについては、「定めなくてもよい」「定めるべきではない」という意見が多かった。とくに医師は他職種よりもこれらの回答の割合が高かった。
(国53.2%、医71.3%、看56.5%、介55.8%)
自分で判断できなくなった場合に備え、家族の中から自分に代わって判断してもらう人をあらかじめ決めておくことについて、「賛成である」と回答した者の割合がもっとも高く、とくに看護師と介護職員は7割を超えた。
(国62.8%、医68.3%、看74.2%、介76.1%)
家族から、治療の選択について代わって判断してもらいたいとあらかじめ頼まれた場合、引き受けるかどうかについての質問では、「引き受ける」と回答した者の割合がいずれの対象者でももっとも高かった。
(国57.7%、医81.0%、看64.9%、介63.6%)
ケース別に希望する療養場所について質問したところ、「末期がんであるが、症状が健康なときと同様に保たれている場合」では(国71.7%、医87.7%、看92.0%、介85.7%)と居宅を希望する割合が高かったが、「末期がんで食事や呼吸が不自由な場合」では(国37.4%、医57.5%、看66.6%、介58.6%)と、居宅を希望する割合は、かなり減少した。
「認知症が進行し、身の回りの手助けが必要な場合」では、在宅を希望する人の割合は、(国11.8%、医23.7%、看13.2%、介16.6%)で、いずれも介護施設を希望する割合がもっとも高かった。
希望する治療方針は、状態像によって差があるが、おおむね「肺炎にもかかった場合の抗生剤服用や点滴」「口から水を飲めなくなった場合の水分補給」は希望する割合が高く、「中心静脈栄養」「経鼻栄養」「胃ろう」「人工呼吸器の使用」「心肺蘇生処置」は57~78%が望んでいなかった。
医師・看護職・介護職員に「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」を参考にしているかどうかについて質問したところ、いずれも「ガイドラインを知らない」と回答した者がもっとも多く、(医33.8%、看41.4%、介50.2%)だった。
医療施設・介護施設に、施設の職員に対して、人生の最終段階における医療に関する教育・研修を行っているかを質問したところ、「行っている」との回答がもっとも多かったのは介護老人福祉施設で5割を超えた。一方、診療所では1割に満たなかった。
(病院28.4%、診療所7.3%、介護老人福祉施設56.3%)
◎厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/