7月13日に開かれた第3回東京都社会福祉審議会検討分科会では、東京都の福祉の将来展望を検討する詳しい意見書の骨子案が示された。
進行役を務めた国際医療福祉大学大学院の高橋紘士教授は、「まだ骨子案なので内容がこなれていないが、キレイにまとめようと思わず、いろいろな角度から意見を述べてほしい」と12人の出席委員らに呼びかけ、都に対して忌憚なく発言するよう求めた。
委員の間では、東京都が都市型モデルとして推進する高齢者向けの「ケア付き住宅」など住まいや居住機能についての意見が相次いだ。
骨子案には都内の特別養護老人ホームの整備費(用地費含む)は定員1人当たり約2,000万円で、仮に2025年に見込まれる都内の要介護4〜5の高齢者18万人全てを特養で対応すると整備費だけでも今後3兆円を要するとの試算が掲載された。
文京区長の成澤廣修委員は「東京は非常に土地が高い。住宅施策促進を掲げても、用地費の助成について明記しないと民間事業者は手を上げることができない。ケア付き住宅をどう増やすのか供給方法を具体的に示してほしい」と要望した。
国際医療福祉大学大学院教授の野村歡委員は、介護施設の整備率は欧米と比較して遜色はないが、ケア付き住宅に関しては、欧米の整備率6〜12%に対し日本は4.4%ととりわけ整備が遅れているとされたことについて、「ケア付き住宅の概念があいまい。欧米といっても各国いろいろある」ときちんと議論できるレベルの細かなデータを求めた。
青山学院大学教授の手塚和彰委員は、自助・共助・公助に加え互助機能の強化が強調されている点について「一部の地域ではすでに実施されているが、一種のポイント制のように福祉に貢献したら老後にそれが活かせるようなシステムを地域に導入する。メリットが明確になれば若い世代の福祉参画も期待でき地域で互助組織ができやすい」と提案した。
公募委員で主婦の久保美弥子委員は、「訪問介護のヘルパーをしているが、認知症の利用者宅を訪問すると、ご自宅のはるか前からでも叫び声が聞こえ、そのお宅は近所迷惑なので雨戸を閉めている。互助、ボランティアといっても誰しもが対応することは難しい。認知症の対応は在宅では限界があると思うが、かといって施設でも対応できないからと入所が断られることもある」と現場の厳しさを訴え、地域の支援機能を過度に期待する姿勢をいさめた。
東京商工会議所女性会顧問の渡辺光子委員も「認知症の調査研究を5〜6年しているが、職員が対応しきれず“うつ”など精神的に病んでしまう人が非常に多い。都はグループホームをどんどん作っているが、認知症についての知識やコミュニケーションのノウハウなど教育を受けずに働いているケースがみられ、専門職のケアをどう考えていくのか気になる」と住まい整備を主要課題とする行政側にサービス提供体制のあり方も問いただした。
同審議会は8月以降も毎月、起草委員会を開催して審議を続行し、10月の総会に向けて議論を深めていく。