富士フイルム株式会社と京都大学iPS細胞研究所(所長:山中 伸弥、以下CiRA)は、患者由来のiPS細胞を用いてアルツハイマー型認知症治療薬「T-817MA」に関する共同研究を開始したことを、3月27日に発表した。
この研究は、iPS細胞を用いて「T-817MA」の有効性を予測するバイオマーカーの特定を目指すなど全く新しい新薬開発へのアプローチであり、アルツハイマー型認知症治療薬の開発を加速させるものとして期待されている。
富士フイルムは、グループ会社の富山化学工業株式会社にて、アルツハイマー型認知症の治療薬の研究を進め、強力な神経細胞保護効果と神経突起伸展促進効果を有し病態動物モデルでも高い治療効果を示す「T-817MA」を見出した。現在、米国で「T-817MA」の第2相臨床試験を進めており、バイオマーカーの解明に取り組んでいる。
またCiRAの研究チームは、患者由来のiPS細胞から分化させた神経細胞でアルツハイマー型認知症における神経細胞死やアミロイドベータの分泌などを調査した結果、アルツハイマー型認知症患者の原因遺伝子によってそれらに差があることを解明している。
今回、CiRAの解明結果を活用して、富士フイルムとCiRAは、アルツハイマー型認知症患者由来のiPS細胞から分化誘導させた神経細胞を用いて、「T-817MA」の有効性を予測するバイオマーカーの特定やアルツハイマー型認知症患者の治療に対する新たな臨床試験の方法の確立を目指す共同研究を行う。またこの共同研究では、細胞生育・増殖のための足場である、富士フイルムの「リコンビナントペプチド(RCP)」を用いて、iPS細胞の樹立や神経細胞への分化誘導の効率化に関する検討も実施する。
今回の共同研究は、患者由来iPS細胞を用いて得た培養皿の中のデータを、実際のヒトの臨床試験でのデータに付き合わせて解析することが特長。患者由来iPS細胞を用いて培養皿の中と実際の臨床試験を直接結びつけることは、これまでになかった新たな研究方法であり、最終的に本方法で患者さんに届くまでの薬剤開発を行うことが可能になると考えられている。
◎富士フイルム
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