3月17日、横浜市介護支援専門員連絡協議会は、地域包括支援センターを併設している「地域ケアプラザ※」内の居宅介護支援事業所と、一般の居宅介護支援事業所を対象に実施したアンケート調査の結果をまとめた「『包括支援センターと民間事業所の関係性』についてのアンケートに対する報告書」を公表。3月27日に、報道関係者に対して報告書の説明の場を設けた。このアンケートは地域包括支援センターの委託事業のあり方や公正中立性、また保険者の管理体制や情報の開示などについて考察することを目的として実施された。公表されたアンケート結果と横浜市介護支援専門員連絡協議会の見解について報告する。
※地域ケアプラザとはおおむね中学校区に一つ置かれている横浜市の独自機関。横浜市から委託を受けた社会福祉法人や社会福祉協議会が運営し、地域のボランティア等の活動・交流、福祉に関する相談・助言・調整(地域包括支援センター)、介護予防支援・居宅介護支援、介護予防通所介護・通所介護(デイサービス)の4事業(近年はデイサービスなしの3事業のケアプラザもある)を行っている。
■アンケート調査について
【実施主体】横浜市介護支援専門員連絡協議会
【対象と回収率】地域ケアプラザの居宅介護支援事業所134カ所(回答数65。回収率49%)、一般の居宅介護支援事業所約450カ所(回答数161。回収率35%)
【方法】自記式アンケート調査。アンケート用紙を各居宅介護支援事業所の管理者宛に郵送。無記名で郵送により回答
【調査時期】平成24年10月~12月
【アンケート調査の構成】
▼事業所情報項目
法人の種別、併設事業所か単独事業所か、開設からの年数、ケアマネジャー換算数
▼平成24年1月~6月までの取扱件数についての項目
・各月の相談件数を含む新規件数(要支援・要介護問わず)の申込経緯(内訳:包括センター/病院・医院/本人家族/その他)
・新規利用者獲得で困っていることの有無、その理由(自由記述)
・新規利用者獲得のための営業努力の有無、コメント(自由記述)
・地域包括支援センターの交流会等への参加の有無、コメント(自由記述)
・困りごとや苦労していること(自由記述)
横浜市をはじめ、保険者は介護保険を利用したいという市民に対し、地域包括支援センター(以下、包括)に相談に行くよう積極的に案内している。そのため、新規利用者の多くは包括に足を運ぶ。では、包括に集まった新規利用者はどこに紹介されていくのか。横浜市では以前から、包括から一般の居宅介護支援事業所(以下、居宅)への新規利用者の紹介が少なく、その多くは地域ケアプラザ(以下、CP)内の居宅に紹介されているのではないかとささやかれていた。CPを受託した法人が運営している包括と居宅が、すぐ隣り合わせでCP内に同居しているからである。しかしこれまで、新規利用者の紹介先を明らかにした客観的なデータはなかった。そこで今回、横浜市介護支援専門員連絡協議会(以下、協議会)がアンケート調査を実施するに至ったとのことである。
調査の結果、CPの居宅は新規利用者の8割以上が包括からの紹介である一方、一般の居宅が獲得している新規利用者のうち包括からの紹介は5割強に留まっていることが明らかになった。また、新規利用者獲得について、CPの居宅は約8割が「困っていない」と答えたのに対し、一般の居宅は約半数が「困っている」と回答。利用者獲得のために「工夫している」というCPの居宅は約半数に留まったが、一般の居宅は7割強が「工夫している」と答えるなど、新規利用者獲得の困難感には両者に開きが見られた。「新規利用者獲得が難しく、閉鎖に追い込まれる一般の居宅もある中、これは問題ではないか」と、調査を担当した協議会制度対策委員会委員長の松村泰恵氏はいう。
協議会代表の原田保氏は、「こうした事態は最初から想定できたこと。受託した法人のモラルに委ねてチェック体制を設けなかった横浜市には、CPのような機関を民間委託している責任を、また、受託法人にはCPや包括の社会的位置づけ、意味をもう一度考えてほしい」と訴えた。
自由記述を見ても、CPの居宅は「包括センターと同一事業所なので困らない」「包括からの依頼が絶え間なくある」等、包括併設であるため、新規利用者獲得にあまり困難を感じていないことが見て取れた。一方、一般の居宅は、「新規利用者が少ない」「包括からの紹介がない」「依頼が来るのは要支援、ターミナルがほとんど」など、困難を訴える記述が多かった。
しかし、CPの居宅にも、「システム上包括を通しての新規獲得という形になっており(中略)上下関係のようで違和感を覚える」「新規の依頼が少なく、どのように新規を増やしていけばよいか、課題」といった記述が見られるなど、すべてのCP居宅が新規獲得のあり方に疑問や困難を感じていないわけではない。一般の居宅の方では、「同じ包括から繰り返し依頼が来る」「定期的に包括や病院から依頼がある」など、包括と密な関係を感じさせる記述も見られた。所在エリアの包括によって対応が異なると考えられ、まさに原田氏の指摘通り、法人のモラルに委ねられている実状がうかがえた。
介護予防支援が始まった当初には、「要支援の利用者を受けないと、新規利用者を紹介しない」と明言する包括もあったと原田氏はいう。そのため今も、要支援を受けないと紹介してもらえないのではないか、という懸念を抱く居宅は少なくないとのこと。「そうしたパワーバランスの元で、たとえば地域ケア会議に包括の招集で会議参加を求められたら、気持ちよく参加できるかどうか。報告書はすでに横浜市に提出したが、包括と一般の居宅の健全な関係を築いていくためにも、これから新規利用者がCP受託法人の居宅と一般の居宅それぞれにどの程度紹介されていったのか、データを取り、明らかにすることを求めていきたい」と語った。
◎横浜市介護支援専門員連絡協議会
http://www.ycm-kyougikai.net/