福祉大学卒で国家資格持ちでも転職――介護事業者支援セミナーレポ

介護労働安定センターが11月16日に開催した、3回目となる介護報酬改定シリーズのセミナーには約80名の介護事業者が参加し、淑徳大学准教授の結城康博氏が自ら事業者に取材した体験を踏まえて介護報酬改定と事業経営について講義した。

講演のはじめ、結城氏は3%引き上げとなった今春の介護報酬改定を振り返り、「個人的には過去の改定で引き下げられた分を考慮して、最低7%は引き上げてほしかった。7%が無理でも5%だったら介護業界にインパクトがあったのではないか」と話した。

申請率が72%と伸び悩んでいる介護職員処遇改善交付金については、「介護報酬を1%引き上げるのに700〜800億円かかるといわれる。皆さんが今、面倒くさい申請事務手続きに追われている介護職員処遇改善交付金を別口でもらうより、改定時に一気に5%引き上げてくれていれば現場の賃金引上げへの反映も違っていたと思う」と意見を述べると、参加した事業者の中には何人もうなずく姿が見られた。

また、民主党政権が打ち出した、失業者が介護施設で働きながら給与を得て介護福祉士やヘルパー資格を取得する「緊急雇用対策」に触れ、「真に介護の魅力を理解せず不況を追い風に確保した労働者は、景気が回復すれば流失してしまう」と指摘。「介護という職種が“雇用の調整弁”にされている」と雇用のミスマッチを危惧した。

多くの事業者がヘルパー確保に血眼になる現状について「パートとしてはヘルパーの時給は高めだが、スーパーで時給800円で5〜6時間確実に働いた方が、利用者都合で稼動が左右される仕事よりも安定的。さらに介護技術も対人能力も求められる専門的な内容の割には収入が低い」と人材不足の要因を述べた。

今年3月、元介護職の男性にインタビューした結城氏は男性の転職経緯を語った。福祉系大学を卒業した男性は介護福祉士を取得後、グループホームへ非常勤で勤務。結婚後は子供2人を抱え共働きで働き続けていたが、賃金の割には重労働で体力的に厳しいと感じて一般企業の事務職に転職した。勤務時間は以前とあまり変わらず、「やりがいは介護の仕事のほうがあるが、同じような労働時間で賃金に大差がないなら体力的に楽で家庭との両立もできる」と転職動機を語ったという。

結城氏は「専門系の福祉大学を出て国家資格持ちでも転職してしまう。フィリピン人介護福祉士を連れてくるのもよいが、こうした潜在介護福祉士の対策が重要だ。やりがいに頼るだけで夜勤や命を扱う仕事で年収300万円は低すぎる。せめて年収400万程度に引きあがらないと安定した職場環境とはいえない」と訴えた。

■取材協力
介護労働安定センター

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