パラマウントベッド睡眠研究所は、このほど老化にも影響する昼寝のメカニズムについての研究を発表した。
同研究所は、2009年に設立されたパラマウントベッド株式会社の睡眠研究の専門部門。
昼間に眠気に襲われた時、眠り方によっては悪影響を及ぼし、アルツハイマー型認知症の発症のリスクや死亡率を上げるというデータをもとに、「昼寝は、短め・浅めがポイント」との結論を導き出した。
なぜ、人は昼間に眠くなるのか。それには、人間の生体の大きな2つのメカニズムが関わっている。
ひとつは生体を常に一定の状態に保ち続けようとして働く「ホメオスタシス」で、食事や睡眠が不足すると食事や睡眠への欲求が生まれ、満ち足りていると欲求がなくなるのはこのため。つまり、昼間眠気に襲われるのは夜の睡眠が不足していたり、質の悪い眠りに陥っていたりする場合が多いと考えられる。
また、人間の体には体内時計があり、体温や血圧などさまざまな機能はそのリズムの影響を受けて変化する。このメカニズムを「サーカディアンリズム」といい、「眠気」もこの体内時計によってある一定の変化を刻んでいる。眠気は、概日リズム(1日単位)・概半日リズム(12時間単位)・超日リズム(2時間単位)の複合で表すことができ、このため、早朝の4時頃と午後の14時頃に眠気のピークが強く現れることになる。
居眠り事故の発生率は、このサーカディアンリズムによる眠気の変化とほぼ一致し、眠気のリズムのピークを迎える4時と14時前後に多く発生している。
眠りの体内時計と呼応し、発生しやすくなる居眠り事故は、時に大事故につながることも。では、昼寝をした方がいいのかというと、一概にはそう言えないデータがある。
70歳の人455名に「毎日昼寝するか?」と訊ね、「している」と答えたグループと「していない」と答えたグループを12年間追跡調査し、それぞれの生存率を調べたところ、昼寝習慣があると死亡率が高くなるという結果が出た。
また、アルツハイマー型認知症の発症リスクを調べた結果、アルツハイマーになりやすい特異的な遺伝子であるAPOE遺伝子型の人では、60分以下の昼寝習慣は発症リスクを下げるが、60分より長い昼寝習慣はリスクを4倍以上に上昇させることがわかった。逆にAPOE遺伝子型でも30分以下の昼寝習慣であれば発症リスクが10分の1以下に下がるということもわかっている。
この2つのデータから、むやみに昼寝をすることはかえって健康を害することにつながる、ということがわかる。
昼寝習慣がある人ほど死亡率が高まる要因には、夜の睡眠が十分でないことが大きく影響していると考えられる。ホメオスタシスの法則どおり、夜の睡眠が十分であれば、昼間の眠気は抑えられ、健康的な眠りのリズムが刻まれる。睡眠不足だからと昼間寝すぎてしまうと、夜眠れなくなり、健康的なリズムを乱す可能性も大きい。
しかし、忙しい現代社会では毎晩理想的な睡眠時間をとることは難しいことも。昼寝はそんなときに次善の策として利用するのが望ましく、「どのように昼寝をするか」が重要なポイントになる。
前夜の睡眠時間を5時間に制限し、大学生24名を対象に、昼寝なし、昼寝5分、10分、20分、30分の条件で反応時間や正答率の変化を調べた研究では、20分以上眠ってしまうと昼寝をしないのと同様に昼寝直後のパフォーマンスが低下した。これは、昼寝が長びくと深いステージの睡眠が表れるため、起きた後もその睡眠慣性が働くことが原因と考えられる。このことから、昼寝は深い眠りに入る前の15分程度で切り上げることが重要と言える。
また、車の座席の角度による昼寝への影響を調べた実験では、座席を150度に倒した方が130度に倒した場合よりも早く寝つけ、深い眠りになる時間が早まっているという結果が出た。しっかりシートを倒すことは横になって眠ることに近い。このことから、「横になって昼寝する場合は、より短時間で切り上げる」ことが大切になる。
以上のことから、昼寝の時間は15分以下にし、深い眠りに入る前に起きることが健康長寿につながると言える。
◎パラマウントベッド株式会社
http://www.paramount.co.jp/