介護労働安定センターは11月16日、介護事業者支援セミナーを開催し、介護事業者「やさしい手」介護事業本部長の飯塚忍氏が前半の講演を行った。同日開かれた行政刷新会議を傍聴したため、会場入りが遅れた淑徳大学准教授・結城康弘氏のピンチヒッターに立った飯塚氏は、報酬改定後の事業経営について1時間あまり、参加者らに語った。
飯塚氏は、訪問介護事業にスポットをあてて自社の事業の現状や今後の戦略を説明。1万人以上の利用者を確保している大手事業者であっても、適正化により長時間のサービスがなくなったことからサービスの提供量が減少し、ヘルパーの確保には苦慮してきた経緯を伝えた。
今年1月以降は不況のあおりもあって失業者の増加とともにヘルパーの獲得が上向いてきた一方、利用者の獲得には地域での競合が激しく、顧客ニーズを把握した高い対応力を示さねば生き残れないと報告した。
同社では半期ごとに利用者の満足度調査を実施し、ヘルパーへのヒアリング、利用者宅への定期訪問なども行っている。そうした活動はサービス提供責任者だけに頼ることなく、管理者や店長が参加して作戦会議を開き、課題発見後はケアマネジャーの承認や協力を得て改善案を作り、吸い上げた利用者のニーズをサービスに反映している。
訪問介護事業所1店舗あたりは、1チーム80〜100名単位で利用者を管理し約30名のヘルパーをサービス提供責任者が束ねる。それらをチームリーダー、さらに上の地域マネジャーが統括しているが、チーム内の誰が休んでも現場に対応できるよう電子カルテで利用者情報を共有している。
同社ではヘルパー向けのアンケート調査も実施し、「ヘルパーを続けるために必要なこと」をたずねたところ、定石どおり「時給単価のアップ(15%)」がトップとなったが「サービス提供の明確な指示(13.7%)」が次点となり、「スタッフからの温かい励まし(3.5%)」「ケアマネジャー資格取得支援(1.9%)」などは求めていないことが明らかになった。こうした結果から「サービス提供責任者が親身であることよりも、明確な指示など自分の業務をきちんと行うことが重要」と同社では分析している。
こうした背景から、人材育成とその定着を追及する同社は、2010年の夏以降に職能給とは別に「職務給制度」を導入し、どういうことをプロセスとしてその人にやってほしいのか、どういう姿になってほしいのかを会社側が明確に示し、社員の評価処遇の納得度を高めてモチベーションの維持に努めるという。
■関連記事
・ケアマネ現任・更新研修、予算額が半額に――行政刷新会議
・福祉大学卒で国家資格持ちでも転職――介護事業者支援セミナーレポート