施設は医療に支配されない場であるべき――特定協レポート(1)

有料老人ホーム事業者などが加盟する特定施設事業者連絡協議会は、6月30日、平成22年度第1回定例研究会を都内で開催した。
今回は「特定施設医療の関わり・ターミナルケアを考える」をテーマに、2人の講演者が登壇した。

最初に講演を行ったのは、「アミーユ」ブランドで、現在全国174カ所に有料老人ホームや高専賃を展開する、株式会社メッセージ代表取締役会長の橋本俊明氏。
橋本氏は「特定施設医療との関わり〜医療介護に貢献できるのか」を演題として挙げ、医療介護の相違点や、特定施設での医療の問題点などについて鋭い指摘を行った。

橋本氏によると、「施設は生活の場であるのに、そこに医療が入り込むと、ともすれば医療介護を支配し、生活を邪魔している」と、現在の介護施設での問題点を挙げた。
常に医療が上位にくる理由として、「医療は自然科学に分類され、理論的であるが、介護には理論がない。あるとしてもそれは看護理論の借用」と指摘し、エビデンスありきの医療と、生活ありきの介護は、そもそも同じフィールドでは語れないことを指摘。専門家ばかりが大勢いても生活はよくならず、本来、生活上で必要な場合のみ医療が登場すべきだと述べた。

医師でもある橋本氏が、「生活の場」である特定施設を運営することで見えてきたものは、「医療的に望ましいことと、患者が送りたい生活とは別」というものだった。そして特定施設などの老人ホームは、医療に支配されない生活の場であるべきだとした。実例を挙げると、利用者が食べたくない「栄養バランスのとれた食事」、転倒するから歩かせない、血圧とバイタルで行動制限するなど。これらはすべて医療が生活を支配した結果だと語った。

一方、緩和・ターミナルケアの問題では、これ以上治療のできないターミナル期の方に対しては、苦痛や苦しみを和らげるのが本来の医療のはずなのに、日本ではいまだ本人自身に自分の命をコントロールする権利が与えられていない、と指摘した。それは、ときに当事者(高齢者)の決定が無視されたり、がんを本人に告知しないことに顕著に現れており、本人の意思(延命拒否などの遺言)についても、一度決めたら絶対というものではなく、死亡方針については何度も変更することができなくてはならない、と語った。

また、橋本氏は、「痛みを取り除く」はずのターミナルケアにおいて、日本のモルヒネ使用量は欧米先進国に比べて10分の1〜半分以下であることも問題にし、「亡くなるときに苦しむことは、それまでのその人の人生を無にすることに等しい」と語った。さらに、介護職のなかには、ターミナル期の方の前で涙を流すなど、平静でいられない人を見かけるが、「死と向き合うことがストレスになるようなら介護職や辞めるべき」、とも断定した。

――特定協レポート(2)へ続く

◎特定施設事業者連絡協議会

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