各委員、反論の応酬――介護職によるたんの吸引等検討会レポ2

7月5日に厚生労働省で開催された「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」の初会合では、特養以外での介護職によるたんの吸引、胃ろう処置の実施拡大をめぐり、出席した委員らが意見交換を行った。

自身が24時間人工呼吸器を使用しているNPO法人さくら会理事長・日本ALS協会副会長の橋本みさお委員は、会議中も付き添ったヘルパーからたんの吸引処置を受けながら、代理人を通じ、たんの吸引や胃ろう処置の研修会を行う団体への助成、ボランティアではなく業務として評価されるよう介護職員に対し特別介護報酬など加算措置を講じるよう求めた。

また「障害者自立支援法の重度訪問介護従業者養成研修ではヘルパーは吸引技術の習得に20時間の研修ののち、個人個人違うコミュニケーション術を含めて半年から1年間かけて学び独り立ちする。先に資格ありきはこうした個別対応が無視され、現場では危険。資格を義務付けないでほしい」と訴えた。

日本ホームヘルパー協会会長の因利恵委員は「訪問介護では常勤者が2〜3割程度でパートがほとんど。医療行為実施というリスクを負うことについて、“積極的に取り組みたいができるかどうか不安”という声が多い」と現場の声を伝えた。

全国老人福祉施設協議会介護保険委員会委員長の桝田和平委員は「家族にできるならヘルパーにも研修を受けたうえでやってほしいという声が多い。医療行為であるもの、ないものの2つの選択肢ではなく生活支援の領域の中に家族でもできる医療行為があるのをどうするか考えなければならない。介護職の離職防止や処遇改善を目指す要素として、医療行為の実施による専門性を持たせれば介護職の地位も確立されるのでは」と述べた。

これに対し、日本看護協会常任理事の齋藤訓子委員 は「看護の世界ではある特別の領域においてケアが進化することを専門性が高いというが、介護の世界で医療行為自体ができることを専門性があるとすることが私は理解できない」と反論。
また「特別養護老人ホーム介護職が医療行為を実施したモデル事業でもヒヤリハットの報告があった。ある程度研修をして施設で行っても危険性があったのだから、在宅では隠れた危ない事例はもっと出そう。技術の習得などに向け慎重な議論が必要」と語った。

医療法人アスムス理事長の太田秀樹委員は、「介護職による医療行為について患者側ではなくヘルパーからの不安があがっている。何がヘルパーの不安かというと、何かあったときに責任があることと患者を傷つけてしまうことだと解釈している。斉藤委員は、たんの吸引が危険と主張したが、そんなにリスクの高い行為ではない。医者の立場で言わせてもらえば、ヘタに吸引すると窒息させる、命にかかわるというイメージがあるがそんなことはない」と強調した。

全国身体障害者施設協議会副会長の白江浩委員は同会会員への調査結果を提示し、「たん吸引が70%、胃ろうは85%の施設で実施されていたが、私達は医療行為そのものをやらせてほしいと言っているのではない。必要とする利用者ががいてやむを得ず行っている。当会員の介護職員のように比較的体制を整えている現場でも厳しい状況にあるが、医療行為が義務付けられたとき、やりたくない職員が抱える精神的プレッシャーは大きい」と懸念を示した。

全国ホームヘルパー協議会会長の中尾辰代委員全は「当会員向けのアンケート結果でも賛否両論ある。研修を受けてもどんどん現場の状況は進化していく。安全を担保するための研修制度が整っていない段階で医療行為の実施を検討するのは無理があると感じているがニーズがあることも認識している。医療行為について、あいまいな形で何年間もきてしまったことにヘルパー達は不安を感じている。法整備をきちんとしてほしい」と語った。

事務局が公表したスケジュールでは今後、7月、8月と回を重ねて同検討会を開催し、介護職員が安全に実施できる体制について論議を深めていく予定。

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