東京都健康長寿医療センター研究所は7月8日、「いくつになっても介護予防」をテーマに市民向けの無料公開講座を開催し、同研究所の福祉と生活ケア研究チームから宇良千秋氏が、加齢とともにリスクが高まる認知症の予防対策について語った。
講演の冒頭、宇良氏は年齢別の認知症患者の推計から85歳以上の高齢者では33.9%と3人に1人が認知症だと報告し、「皆さんも周りを見回すと認知症の人がいるかもしれない結構な割合」と会場の笑いを誘った。
宇良氏は、もはや地域でも認知症の人に接する機会が珍しくなくなる現状を警告したうえで、認知症の中で最も多くみられるアルツハイマー型認知症を取り上げ、「発症要因となるアミロイドβ(ベータ)という物質が記憶をつかさどる海馬に蓄積しやすく、認知症予防はアミロイドβ(ベータ)をいかに溜まりにくくするかということ」と高齢者にもわかりやすく伝えた。
また、早歩き程度の運動を週3回以上している人は全く運動しない人よりアルツハイマー型認知症の発症リスクが半分だというグラフを示し、脳の海馬や前頭葉の血流を促す「運動」を生活の中に取り入れるようすすめたほか、新聞や雑誌を読んだりクロスワードパズルなどのゲームなど知的活動の頻度が高い人や、手紙を書いたり電話をするなど社会的ネットワークを持つ人も発症の危険度が低いとのデータを示した。
認知症に至る前段階の“軽度認知障害”の講義に入って、宇良氏は認知症の定義を「物忘れが激しい、言葉が出てこない、注意力が続かないなど、記憶と他の認知障害が重なっている」「半年から1年の間に悪くなっている」「職業生活や社会生活に支障をきたす」と示し、「認知症クイズ」を出した。スクリーンに認知症か老化現象を問う質問が表示されるたびに、判断に迷う参加者らで会場は大いに沸いた。
宇良氏は認知症に至る前段階の軽度認知障害では、特に3つの機能「エピソード記憶」「注意分割機能」「計画力(思考力)」が低下しやすいと告げ、日記をつけて体験したことをあとから思い出したり、調理など複数の作業に同時に注意を払ったり、日帰り旅行を計画して実行するなど脳を鍛えることをすすめた。
またゲームや調理、旅行の計画と実行、ウォーキングなどの運動も個人だけではなくグループ活動として行うと継続しやすいとして、「続けるには楽しむこと、仲間がいること」と仲間と始める認知症予防を説いた。
――老年学講座レポート3へ続く