富士フイルム株式会社は、米国でのアルツハイマー型認知症治療薬「T-817MA」の開発を加速させるため、全米最大のアルツハイマー型認知症の研究機関であるADCS(Alzheimer’s Disease Cooperative Study)と共同で、第II相臨床試験を実施することを決定した。平成26年1月から臨床試験をスタートさせる。
現在、認知症の患者数は、全世界で3600万人で、平成42年には6600万人に到達すると予想されている。そのうち、アルツハイマー型認知症の患者数は、米国で500万人以上であり、平成42年には800万人に達すると見込まれている。
アルツハイマー型認知症の治療薬としては、現状、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬などが上市されているが、これらの治療薬は神経伝達能の増強による症状改善作用を示すものの、病態の進行を抑制することが難しいといわれている。
今回、同社は、グループ会社の富山化学工業にて、アルツハイマー型認知症の進行を抑制する薬剤の研究を進め、強力な神経細胞保護効果と神経突起伸展促進効果を有し、病態動物モデルでも高い治療効果を示す「T-817MA」を見出した。
既に実施した米国における「T-817MA」の前期第II相臨床試験では、軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症患者で認知機能評価スコアや全般的臨床症状評価(※6)などの有効性評価指標の悪化を抑制する傾向が認められ、良好な安全性も確認された。また、病態がある程度進行した中等症の患者を中心に、より有効性が明らかになる傾向が認められた。
ADCSは、アルツハイマー型認知症治療薬とその評価方法の創出のために米国で設立された研究機関で、多数の中核病院と連携し、アルツハイマー型認知症領域で豊富な臨床試験の経験を有している。今回、富士フィルムがADCSと共同で臨床試験を実施するのは、「T-817MA」が革新的なアルツハイマー型認知症治療薬としての可能性を持っていることにADCSが関心を示したからだった。
同社は、治験の対象を「T-817MA」のポテンシャルが発揮できる患者群に設定して、有効性及び用量反応性を確認する第II相臨床試験を実施。今後、ADCSとの協働を通じて、臨床開発の質とスピードを向上させ、「T-817MA」の開発を加速させていく。
◎富士フイルム株式会社
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