中央法規出版は、認知症の母親をうたった詩集『満月の夜、母を施設に置いて』でも知られる藤川幸之助の新刊本、『徘徊と笑うなかれ』を発行した。
父の遺言でしかたなく始めた認知症の母の介護。介護の日々のなかで、「なんで俺が」という気持ちは、いつしか人を思いやる優しさに変わったという。藤川氏は、2000年に認知症の母の詩集『マザー』を出した。「その頃は、認知症のことを痴呆と言っていた。この詩集が“家族が痴呆を語りはじめた”と、記事になった(くらいだった)」と、本人はふり返っている。あれから13年。認知症の母を見つめる詩を書きつなぎ、十数冊の本を作った。そして、1年前母もなくなり、この詩集『徘徊と笑うなかれ』が母の詩集の最後になるという。
「認知症の母に寄り添い、共に歩んだ24年間。この体験が人生にとって、どれほど多くの大切なことにきづかせてくれたことか。言葉のない母が、私に問いかける。命とは何か。生きるとは何か。死とは。老いた母がその存在から、私に問いかけ続ける」。
時にやりきれない介護の苦悩や葛藤をありのまま綴った著者の言葉が、介護する人をやさしく癒す珠玉の詩集である。
■書名:『徘徊と笑うなかれ』
■目次:
I なんで俺がこんなことを
遺書/徘徊と笑うなかれ/悲しみ/待つ/飛行機/海の時間/「ポ」と「ユ」の間/水平線/愚かな病/親ゆえの闇/絆/永遠の二十分
II 母が言葉を失った
身体の記憶/水平線に向かって/桜/双六/問い/匂い/眼張る/最期の言葉/芽吹く/一本の電話/夏の風/この銀河の片隅で/誕生日/その日/祈り
III 危篤
本当のところ/母に見えるもの/父の写真/冬の花弁/返す
IV さようなら
俯瞰/遺影/袋/さようなら
■著者:藤川幸之助
■定価:1,470円(税込)
■仕様:B6変型 /120ページ
■発行:中央法規出版
◎中央法規出版
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