東京消防庁は、9月、救急搬送データから見る高齢者の事故を公開した。
東京消防庁管内では、日常生活の中の事故で毎年約11万人が救急搬送され、その半数近くを高齢者が占めている。平成20年から平成24年までの5年間では26万人超の高齢者が救急車で医療機関へ搬送され、その4割以上が入院が必要な中等症以上と診断されているという。
東京消防庁では、平成20年から平成24年までの5年間の緊急搬送データから、「ころぶ」「落ちる」「ものをつまらせる」「おぼれる」の事故発生の動作別に、高齢者の緊急搬送人数や症状の程度などを整理。
それによると、全体の約8割を「ころぶ」事故を占め、次に多い「落ちる」事故とあわせて5年間に21万人以上の高齢者が救急搬送されていることがわかった。
今後高齢者の人数が増加するにつれ、日常生活での事故で救急搬送される高齢者の増加も予想される。重篤な症状や生命の危険にもつながる日常生活の事故を防ぐため、事故の傾向や対策について知っておきたい。
■最も多い「ころぶ事故」の9割が屋内で発生
高齢者の事故の中で最も多いのが「ころぶ」事故で、毎年3万以上が救急搬送されている。その数は年々増加し、平成24年には42,625人が救急搬送された。また、高齢になるほどころぶことがケガにつながることがわかっている。「ころぶ事故」は、救急搬送時の初診時では軽症が最も多いが、4割超の17,991人が入院が必要な中等症以上と診断されている。
発生場所で最も多いのが「住宅など居住場所」で、次に「道路・交通施設」となっている。「住宅など居住場所」の9割は屋内での発生で、「ころぶ」事故全体でも半数以上を占める。場所別では「居室・寝室」が最も多く、次に「玄関・勝手口」「廊下・縁側」となっている。
・ころぶ事故を防ぐために
段差をなくす、足元灯・照明器具の設置で足元を明るくする
段差(段の先端部)をわかりやすくする、 階段・廊下・玄関先などに滑り止めをする
手すりなどで歩行を補助する、継続できる運動をする
整理整頓し、ころぶ原因となるものを取り除く
■「落ちる」事故は、階段をはじめ、ベッドなどでも発生
高齢者の事故で「ころぶ」事故に次いで多いのが「落ちる」事故で、毎年5,000人以上、平成24年は5,575人が医療機関に救急搬送されており、救急搬送時の初診時に、約5割の高齢者が入院が必要な中等症以上と診断されている。
「落ちる」事故は、7割以上が住宅など居住場所で発生し、発生原因で最も多いのが「階段」で、次に「ベッド」「脚立・踏み台・足場」と続く。
・落ちる事故を防ぐために
階段に握りやすく滑りにくい手すりを設置する、滑り止めマットを敷く
■「ものがつまる」事故は普段の食事で発生
高齢者の事故の中で重症度の高いもののひとつがものをつまらせたり、誤って飲み込んでしまうことによる事故。毎年1,000人以上がものがつまることなどが原因で救急搬送されており、その人数は70歳代後半くらいから増加する傾向にある。
事故の発生原因で最も多いのが「おかゆ類」で、次に「餅」「パン」となっており、特別な食べ物ではなく、普段の食事で事故が発生していることがわかる。
・ものをつまらせる事故を防ぐために
食べ物は小さく切り、よく噛む
お茶など水分を取りながら食事する
■「おぼれる」事故は重症度が高く、中等症以上が約97%
高齢者の事故の中で最も重症度の高い事故が「おぼれる」事故。5年間で2,070人が救急搬送され、その9割以上が入院が必要な中等症以上と診断されている。平成24年中の月別の搬送人員では、12月から2月までが100人以上と多く、「おぼれる」は冬場に多く発生していることがわかる。救急搬送時の初診時では中等症以上の割合が97.4%で、ほかの事故と比べて非常に高い。
・「おぼれる」事故を防ぐために
入浴は想像以上に身体に負担をかけることを認識する
長湯や高温の入浴は避ける
飲酒後に入浴はしない
入浴時は、家族がこまめに声をかける
◎東京消防庁
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