独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は9月5日、浜松医科大学や浜松ホトニクス株式会社と共同で、アルツハイマー病などの認知症患者の脳の病態を解明し、治療につなげる次世代PET診断システムを開発したと発表した。
超高齢化社会を迎え、アルツハイマー病など認知症の病態の解明は急務となっている。しかし現状の診断システムでは、患者が長時間静止している必要があり、重症の患者ほど正しい測定が困難で、病態の進行が重度の脳の変化は未知の領域だった。
認知症などの診断法は問診が主流で、研究レベルではMRIやPETを用いた診断法の開発が進められている。認知症のPET研究では、アミロイド4β蛋白の蓄積を画像化するアミロイドイメージングが主流で、認知機能の変化をより反映するイメージング薬剤が望まれており、中でも、ニコチン受容体が新しい診断や治療のための効果指標として期待されている。
同研究では、脳内の認知機能などの変化を反映するイメージング薬剤と、患者の頭部の動きを補正することで高精度計測を可能とする頭部用PET装置を世界で初めて開発。これらを組み合わせることにより、後期の認知症患者の脳の状態も詳細に把握するだけでなく、適切な治療薬の選択が可能となり、今後の治療や薬剤開発に貢献することが期待されるという。
今回開発したPET装置について、浜松ホトニクス株式会社は、検出器の医療機器メーカーへの供給を見込でんいる。さらに、将来的な発展としては、イメージング薬剤を認知症治療薬の候補化合物との脳内相互作用を非侵襲的に評価できる「創薬支援ツールとしてのPETプローブ」として用いることが可能で、実現すれば有効な治療薬の開発スピードが一層速まり、認知症の治療に大きく貢献することが期待されるという。
◎独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
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