NITE(ナイト:独立行政法人製品評価技術基盤機構)は、9月12日、電動車いすによる事故の注意喚起を行った。
電動車いすは歩行に困難がある高齢者や障害のある人にとって、行動範囲を広げてくれる便利なものだが、不注意や使い方を誤ったために事故が発生することも多く、死亡や重篤なけがを負う場合がある。とくに使用方法に慣れていなかったと思われる使用開始から1年未満の事故が全体の40%を占めている。また、60歳代から事故が増える傾向があり、とくに80歳以上の使用者で死亡・重傷事故が多く発生しているという。
電動車いすの事故は、「製品に起因する事故」は件数が少なく、被害も軽微でおさまっている一方、「製品に起因しない事故」が約半数あり、こちらは重篤な人的被害も発生している。これらの中には、不注意や誤った使い方に気をつけることで未然に防げる事故が多くある。そこで、製品を正しく安全に使用して事故を防止するため、今回の注意喚起となった。
■電動車いすの種類と事故の件数
電動車いすは、直接ハンドル操作をするハンドル形と、ジョイスティックレバーで操作をするジョイスティック形(標準形や簡易形)があり、ハンドル形は主に高齢者が使用することが多く、後者は障害のある人が使用することが多いが、高齢者も使用することがある。
NITE(ナイト)に通知された製品事故情報のうち、電動車いすの事故は、2008年度から2012年度までの5年間に91件あり、うちハンドル形70件、ジョイスティック形21件。被害状況別では、死亡事故33件、重傷事故20件、軽傷事故13件、拡大被害5件、製品破損など20件だった。
■事故の傾向と被害者の傾向
事故発生状況を分類すると多かったのは、電動車いすで走行中に舗装路で路肩などから転落したケースと、未舗装路で転落したケース。
ハンドル形電動車いすでは60歳代から被害者が増加し、特に80歳以上の男性で被害者が多くなっている。また、被害の状況では約8割が死亡や重傷に至った。80歳以上の男性の事故被害者は20人で、被害状況は死亡14人、重傷5人、軽傷1人だった。
ジョイスティック形電動車いすでは60歳以上で死亡事故が発生し、70歳代の男性の被害者が4件で最も多くなっている。
■電動車いすの事故の防止対策
・取扱説明書の注意事項を守る。
・安全運転講習会に参加し、正しい使用方法を習得する。
地域の交通安全協会、社会福祉協議会、全国介護者支援協議会、製造事業者や販売事業者が行う安全運転講習会に参加する。
初めて運転する場合は、安全な使用方法の指導を個別に受けるか、安全運転講習会に参加し、慣れるまでは安全な広い場所で十分に練習する。
運転に慣れてからも、定期的に講習会の参加を欠かさない。新しい電動車いすに乗り換える場合(代車利用、短期レンタルを含める)も、必ず乗り方の指導を受けるか安全運転講習会などに参加する。
・日常の点検を行う。
1) 取扱説明書に従い、運転前には必ず日常点検を行う。
2) 走行前にはバッテリーの残量を確認する。遠出する場合は、満充電(電荷が十分蓄えられた状態)にする。
・運転時の注意事項を守る。
1) 走行中はわき見運転をしない。
2) 走行中は路肩に寄りすぎないこと。道を譲ろうとして路肩から落ちないように注意。
3) 坂道を下る際は、取扱説明書に従って速度を遅めに設定する。
4) クラッチ(手押し走行装置)を切っての走行は決してしない。とくに坂道ではスピードが徐々に加速し、ブレーキが効かなくなることがあるので厳禁。
5) 電動車いすから乗り降りするとき、無意識にレバーなどに触れ、突然動き出して転倒するおそれがある。乗降時は必ず電源スイッチを切る。
6) 電動車いすが制御不能となり、事故に至るおそれがある濡れた落ち葉で滑りやすい場所や、あぜ道や砂利道など舗装されていない道では利用を避けるか、介助者と一緒に利用する。
7) 夜間の運転は控える。
8) 踏切の横断は避ける。やむを得ず横断する場合は、必ずいったん停止し、左右の安全を確認する。脱輪したり線路の溝にタイヤが挟まらないようハンドルをしっかりと握り、線路に対してできるだけ直角に渡る。
9) 電動車いす(主にジョイスティック形)にある転倒防止バーを使用する。
◎NITE(ナイト:独立行政法人製品評価技術基盤機構)
http://www.nite.go.jp/