UR都市機構は、「超高齢社会における住まい・コミュニティのあり方検討会」の中間とりまとめを先ごろ発表した。
検討会は、辻 哲夫氏(東京大学高齢社会総合研究機構特任教授)を座長に、東内京一氏(埼玉県和光市保健福祉部長)、深尾精一氏(首都大学東京都市環境学部名誉教授)をはじめとする有職者、厚生労働省老健局や国土交通省住宅局の官僚が委員を務めている。
約半世紀にわたり、大都市圏の住まいやまちづくり、中堅所得者層への良質な住宅の供給に大きな役割を果たしてきたUR都市機構。現在、UR団地における高齢化の水準やスピードは全国平均を大幅に上回り、日本の今後の都市の高齢化を先駆けて迎えている状況だ。
検討会では、UR団地とその周辺地域で生じている課題は「我が国の都市の高齢化問題を先取りするもの」と捉え、URが地方公共団体、福祉事業者などと連携し、新しいライフスタイルやまちのあり方などを提案・実践することは「超高齢社会における諸課題への処方箋となる」とし、国家的モデルプロジェクトとして実施することの必要性を指摘。医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが一体的に提供される地域包括ケアシステムを高い水準で実現することを柱とした提言をまとめた。
具体的な事業の進め方は以下の通り。
■モデルプロジェクトを行う団地(重点団地)の選定
高齢者向け住宅の整備に関する政府の当面の目標年次である平成32年度までに、全国の100程度の団地を重点的に整備する。
対象となる団地の要件は、急速な高齢化の進行が見込まれる大都市郊外部に立地し、在宅医療福祉サービスの効率的な提供、団地内における円滑な住み替えの実現、在宅医療福祉施設等の誘致に必要な賃貸施設や敷地の確保の観点から、一定規模以上(1000戸程度)の団地であること。
また、すでにエレベーターが設置されていること、住宅の平均家賃が一定額以下であることも条件。
■地域医療福祉拠点の整備
・URと自治体が中心になり地域の連絡会議を設置し、地域に不足している在宅医療福祉施設などをUR団地に誘致する。
在宅医療福祉施設は、在宅療養支援診療所(24時間対応) 訪問看護ステーション(24時間対応)、 訪問介護事業所(24時間対応)、小規模多機能型居宅介護事業所、 通所系事業所、サービス付き高齢者向け住宅で、団地及びその周辺地域に確保する。
また、医療・介護の在宅サービスを行う事業者間で情報交換など連携ができるよう、多職種連携の活動拠点となるスペースを確保する。
・地域医療福祉拠点団地連絡会議(仮称)の設置及び運営
URと地方公共団体が中心となって地域的な連絡会議を設置し、医療福祉関係者、事業者、NPO、自治会、居住者等多様な関係者間の連絡や調整を行う。
・コミュニティ・コーディネートの実施
サービスを提供する側と享受する側のマッチングが有効に機能するよう、URなどがコーディネートする。
■比較的低廉な終の棲家を整備・供給
・自立高齢者向けの住宅の整備
一定以上バリアフリー化され、必要に応じて介護・医療、生活支援のサービスの利用ができ、社会参加の機会が提供される住宅を整備する。エレベーター付き住宅棟を活用し、家賃は比較的廉価とする。今後7年間で2万戸程度を供給。
・団地とその周辺での重度の要介護者向け住宅・施設の確保
団地とその周辺に民間のサ高住、特養、グループホームなどを誘致し、自立高齢者向け住宅からの住み替えを可能にする。
■UR団地及びその周辺地域の再生
・自立向け高齢者の住居約2万戸は、手すりの設置やトイレの段差解消など改修を行う。
・住み慣れた地域で高齢者の看取りが可能になるよう、団地の敷地や施設を活用し、重度の要介護者向けにサ高住、特養、グループホームなどを誘致するほか、URが介護可能なサ高住の改修・新築を行う。
とりまとめでは、これらの実践のために必要な国や地方公共団体の支援、規制緩和の必要性にも触れている。
◎UR都市機構
http://www.ur-net.go.jp/