慶應義塾大学は、7月16日、センサーなどを身につけることなく、電波を用いて人の転倒・転落を検出するシステムの開発に成功したと発表した。この研究成果によって、センサー装着の煩わしさや監視カメラによる心理的負担なしに、高齢者等の見守りが可能になると期待されている。
厚生労働省の国民生活基礎調査(平成22年度版)によると、高齢者(65歳以上の人)の要介護の直接原因(ほぼ“寝たきり”の直接原因)の約1割が骨折・転倒によるもの。また、1年間に高齢者の5人に1人が転倒を経験している。転倒を速やかに検出することは、生命や後遺症の観点からも重要度が高い。
転倒予防として、これまでにセンサーを身につけるシステムや監視カメラを用いたシステムがあったが、装着の煩わしさや監視カメラによる心理的負担等が問題となっていた。
同大学では、電波を用いた行動識別の研究を進めることで、センサーなどを身につけることなく、人の転倒・転落を検出することができるシステムを開発。センサから直接見える場所での転倒を95%以上、物陰など直接は見えないところでの転倒も85%以上の確率で検出することに成功した。
今回、開発した電波を用いた転倒・転落監視システムによって、センサー装着の煩わしさや監視カメラによる心理的負担なしに、高齢者等の見守りが可能になる。これは、見守る側も、見守られる側にとっても快適な環境と言える。同大学では今後、実用化に向けて、住友電気工業株式会社と共同で開発したシステムの有効性について検証していく予定だ。
◎慶應義塾大学
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