第一生命保険株式会社のシンクタンク、株式会社第一生命経済研究所は、全国の60歳以上の夫婦2人暮らし世帯の男女800名を対象に、ケア環境の選択と自己決定についてのアンケート調査を実施し、7月30日、その結果を発表した。
現在の高齢世代には、配偶者の死亡後に人生で初めて1人暮らしを経験する人や、親の介護は家族等が同居して行った人が多く、なかには、将来1人暮らしになって、介護・見守りや医療的ケアを必要とする場合の生活に不安を感じている人も多いと思われる。
今回の調査では、全国の60歳以上の夫婦2人暮らし世帯の男女800名にアンケート調査を行い(分析対象は持家に居住する619名)、現在の住まいへの愛着意識とともに、将来1人暮らしになって、介護等が必要になった場合に、彼らがどのようなケア環境を望んでいるか等についてたずねた。
■住まいへの愛着意識は高い
「現在のお住まいに愛着がありますか」という設問文では、「愛着がある」と答えた人が63.2%、「やや愛着がある」と答えた人が26.3%となり、計89.5%の人が現在の住まいに愛着を感じていることが明らかになった。
■将来希望するケア環境
将来、介護が必要になった場合に、ケアを受けたい場所については、夫婦2人の状態別にたずねている。
「夫婦2人暮らしで、あなたの身体が虚弱化した場合」の持家への居住意向は最も高く66.7%だった。
夫婦2人暮らしで、「あなたの記憶力や判断力が衰えた場合」の持家への居住意向は39.6%、「1人暮らしになって身体が虚弱化した場合」の持家への居住意向は14.8%、1人暮らしになって記憶力や判断力が衰えた場合は6.3%だった。
一方、ケア付き住宅、有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、病院を合わせた「ケア付き住宅等」を希望する割合は、「1人暮らしになって記憶力や判断力が低下した場合」が70.3%と最も高く、「1人暮らしになって身体が虚弱化した場合」は66.5%、「夫婦2人暮らしで、あなたの記憶力や判断力が衰えた場合」は44.8%、「夫婦2人暮らしで、あなたの身体が虚弱化した場合」24.1%の順となった。
■相談者は「配偶者」がトップ
また、将来希望するケア環境を、誰かに相談したことがあるかという問いでは、「配偶者」27.5%と最も高く、「子ども」9.5%、「親族」3.6%、「第三者」0.6%と続いた。現在すでに介護状態であるなど、心身が弱っていない間は、なかなか自分たちのケア環境について、具体的な相談を行う心境にはないことがうかがえる。
しかし、「相談したことはないが、相談する必要性を感じている」と回答した人は、「子ども」63.3%、「配偶者」56.0%と高率で、必要だとは思いつつも実際に相談したことがある人はきわめて少ないことが示された。
■ケア付き住宅で重視する点
ケア付き住宅を利用する場合に重視したいこと(複数回答)では、「料金が安い」72.2%、「具合が悪くなったときすぐに治療や看護が受けられる」71.4%、「個室であり、プライバシーが保たれる」69.3%が上位に上がった。
これらの結果から、高齢男女の多くが、個室であることやプライバシーを、料金の安さや医療・看護サービスの提供体制、経営基盤の安定性といった条件とほぼ同じ水準で重視したいと考えていることがわかる。
同研究所の北村安樹子主任研究員は、身体が虚弱化した場合や夫婦2人暮らしの場合に比べ、記憶力・判断力が衰えた場合や1人暮らしになった場合に、ケア付き住宅等の利用意向が高まる傾向がみられ、そこには、たとえ愛着のある自宅であっても、将来1人暮らしになって記憶力や判断力の衰えを感じながら自宅での生活を続けていくことに対する不安感があるのではと分析している。
同調査ではこのほか、エンディングノートへの関心の有無、介護費用のために持家を現金化することへの意識などの設問についても、興味深い調査結果を発表している。
◎株式会社第一生命経済研究所
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