奈良県立医科大学の小澤健太郎准教授らの研究グループは、7月12日、血液中の一酸化窒素(以下、NO)に、パーキンソン病の原因とされる神経細胞の異常を防ぐ作用があることを世界で初めて解明したと発表した。なお、この研究成果をまとめた論文は、英科学雑誌「サイエンティフィックリポーツ」(電子版)に7月16日に掲載された。
パーキンソン病は加齢と共に発症し、手足のふるえ、手足のこわばり、動作が緩慢になるといった症状が出る。パーキンソン病は神経伝達物質であるドーパミンを作る神経細胞が減少することで発症すると考えられているが、その原因は未だに不明な点がある。
今回、研究グループは、たんぱく質の一つ「パーキン」がNOと結合すると活発に働くメカニズムを解明。実験ではパーキンにNOを3時間投与すると、機能が活性化して不要なたんぱく質の分解を促進し、神経細胞の保護につながった。一方、投与時間を倍にするとNOがパーキンの働きを弱くする物質に変化し、細胞機能障害を起こすことも分かった。
これまで、NOがパーキンソン病の発症に関わっていることは示唆されていたが、そのメカニズムに関しては明らかではなかった。今回の研究ではそのメカニズムの一端を明らかにし、NOがパーキンソン病において発症を抑えるのと促進する両方に働いていることを解明した。このNOの2つの作用は、異なるメカニズムによっておこっており、NOの細胞保護に働く作用だけをおこす薬を開発できれば、新しいパーキンソン病治療薬になることが期待される。
今回の研究結果がパーキンソン病患者にとって光明となるか。注目したい。
◎奈良県立医科大学
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