<事故防止策>家庭内事故は年間1万件以上!――セミナールポ(2)

東京都健康長寿医療センターは、6月20日、6月に開設した新センターを記念した講演会「今後の高齢者医療と研究について ~ 新センターの目指すもの ~」を開催した。
そのなかから、同センター研究所副所長の高橋龍太郎氏による講演「健康は住まいから」を紹介する。

高橋氏は、約30年にわたって高齢者の健康生活の研究に従事。今回の講演では、住まい、なかでも室温環境に焦点をあて、転倒の予防や血圧の管理に有効な知見が語られた。

■家庭内事故は、複合的な要因で発生する
家庭内事故は、年間に1万1,000~2,000件起きており、その数は交通事故の年間件数の約2倍。家庭内事故の代表格で、高齢期の健康をおびやかし、要介護状態の大きな原因となる転倒事故は、段差や手すりの有無や、適切な照明など住環境(外的要因)に焦点が当てられがちだが、同時に筋力やバランスの衰え、歩行速度の低下など老化に伴う要因が関わっているという。

「さらに高齢になると、呼吸や循環、消化、排泄を司る自律神経が老化します。そのため、お風呂に入る、立ち上がる、食事をする、排泄するという日常の動作が心血管動態に影響をもたらし、転倒などの要因となります。最近の研究では、高齢者の2割は食後30分に血圧が急に下がるため、めまいを起こして転倒につながりやすいことがわかっています」

このように、転倒は複合的な要因で起きるが、とりわけ自律神経の老化は自分では気づきにくく、家庭内事故を引き起こす危険があるという。
周囲の人が高齢者の体の特徴を知ることが、事故を未然に防ぎ、要介護のリスクを減らすことへとつながるのだ。

■室温環境は、家庭内事故や血圧管理の重要なファクター
家庭内事故には転倒のほかに、浴槽での溺死や食べ物を咽喉につまらせる窒息があるが、厚生労働省のデータ(事故種別死者数の推移1998―2007年)によると、月別の発生頻度は6月と9月に低く、1月と12月に多くなっており、「溺死者数では、6月と9月の平均が約300人なのに対し、1月と12月平均が約800人と倍以上の違いがあります。このように、家庭内事故が季節で変動があるのは、外気温が室内に影響し、それが健康にも影響を及ぼしていることがわかります」。

東京都健康医療センター研究所では、6年前から室温環境と高齢者の健康についての研究を開始。室内を部分暖房した場合と全体暖房をした場合と、暖房方式の違いが筋力にどのように影響するかを調べたところ、握力・膝屈伸力ともに室内を適温に保つ全体暖房の方が高いことが明らかになった。
山形県の要介護高齢者を対象に行なった歩行テストでは、冷気を遮断する二重窓を設置する前と設置した後で、座っている状態から立ち上がり、3m歩いた後に座るまでにかかる秒数を比較したところ、二重窓設置後に有意に歩行速度が早くなった。
このことから、室内を適温に保つことは、高齢者の体の機能の低下を防ぎ、家庭内事故の予防につながると考えられる。

「室内が適温である場合と適温範囲外(室温が低い)の場合で、高齢者血圧を測定したところ、室温が低い方が収縮期血圧(最高血圧)、脈圧(最高血圧から最低血圧を引いたもの)ともに高くなりました。さらに、室温が低いと、推奨される血圧値を超える回数が増えることも判明しています」

また、ひとりの高齢女性の血圧を10年間毎日測定したところ、6・7・8月は低く、1月・12月は高いということも判明。「別の研究では、外気温度が1℃下がると室内でも血圧が0.89mmHgくらい上がることがわかっています」。

適切な室温環境を維持することは、脳卒中心臓病のリスクと密接な血圧の管理につながる。介護予防のひとつとしても知っておきたい。

◎東京都健康長寿医療センター
http://www.tmghig.jp/

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