株式会社伊藤園は、静岡県立大学薬学部、社会福祉法人白十字会と共同研究し、緑茶抹(通常の緑茶を粉末にしたもの)の摂取により高齢者の認知機能低下が改善される可能性を確認したと発表した。同研究は、5月31日で開催された「第54回日本神経学会学術大会」でも発表している。
高齢化に伴う認知機能の低下を引き起こす要因はさまざまだが、そのひとつがアルツハイマー型認知症に代表される神経の変性によるもので、次に脳梗塞や脳出血により脳の血流が障害されることによるものが多い。。
一方、カテキンやテアニンなどの緑茶成分が、神経保護作用をもつことがいくつもの基礎研究で示されており、また緑茶をよく飲む人ほど、認知機能の低下が少ないという疫学調査の結果も報告されている。
同社は、これまでにテアニンを多く含む緑茶抹を継続的(1年間)に摂取することにより、高齢者の認知機能低下が抑制される可能性を大学との共同研究により確認してきた。
今回の研究では、認知機能が低下気味の高齢者に緑茶抹を3ヶ月間摂取してもらうことにより、認知機能が改善する傾向を観察した。
■研究の内容
本人または家族から文書同意を得られた老人ホーム入居中の人で、認知機能検査(ミニメンタルステート検査:認知症のスクリーニングに用いられる検査。30点満点で、23点以下であると認知症が疑われ、24~27点では軽度認知機能障害の可能性がある)の点数が27点以下の高齢者(平均年齢88歳、男性2名、女性10名)に対し、緑茶抹を1日2g(総カテキン量約227mg)、3ヵ月間摂取してもらい、緑茶抹の摂取を開始する前と3ヵ月摂取後に認知機能検査を行い、血圧、血清脂質、耐糖能異常などの動脈硬化指標、および血中カテキン濃度を測定した。
■研究の結果
3ヵ月間、緑茶抹を摂取してた12名の内訳は、血管性認知症8名、アルツハイマー病3、レビー小体型認知症1名で、認知機能検査(ミニメンタルステート検査)の点数の平均値±標準偏差(範囲)は、15.3±7.7点(5点~27点)だった。
3ヵ月間摂取後に同じ検査を実施すると、点数は17.0±8.2点と有意に(p=0.025)増加し、12名中8名に改善が見られた。この傾向は、検査の点数が10点以下、11~23点、24~27点のいずれのグループでも認められ、さらに検査のうち近時記憶を評価する項目で、特に顕著な改善が見られた(p=0.012)。
近時記憶の低下が認知症の初期症状であるため、緑茶抹の摂取が認知症の進行を抑制する可能性を示唆していると思われる。
ほかの評価項目では、血清中性脂肪の値が有意に低下(摂取前124±80mg/dL、摂取後103±57mg/dL、p=0.041)。緑茶抹摂取率は99.7%と良好であり、摂取後の血中カテキン濃度は有意に上昇した(p<0.001)
◎株式会社伊藤園
http://www.itoen.co.jp/