フジッコ株式会社は、第67回日本栄養・食糧学会大会にて、咀嚼困難者用に加工した食品「ソフトデリ」の食べやすさを筋電位測定法によって評価した結果を発表した。
高齢化に伴い食事の際に咀嚼困難な人の数も急激に増加しているが、食品の見た目は食欲に大きな影響を与えるだけに、「きざみ食」や「ミキサー食」などは、高齢者の食生活の質の低下につながる。
同社では、咀嚼困難者の食欲の増進と健康に寄与するため、形を残したままでかたさや皮残りなどの問題を解決した漬物、煮豆、佃煮を「ソフトデリ」シリーズとして2008年4月から販売。「かむ力が弱くなってもおいしい漬物・煮豆・佃煮を食べたい」という声は強く、「ソフトデリ」は現在、多くの高齢者施設で利用されている。
研究では、独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所の神山かおる氏との共同研究により、人の咀嚼・えん下時の筋活動をモニタリングし数値化できる筋電位測定法を用いて、咀嚼困難者用に加工した漬物、煮豆、佃煮の評価を試みた。
筋電位測定は、人が実際に咀嚼している時に使う筋肉の活動を測定するため、食べている途中の食品の物性の変化も含め、通常の機器測定では評価しにくかった食べやすさを評価することができる。
今回の試験では、咬筋(こうきん=咬みしめる時に使う筋肉)と舌骨上筋群(ぜっこつじょうきんぐん=開口・飲み込み・舌の動きに必要とされる筋肉)に電極を取り付け、咀嚼開始からえん下終了までの筋電位を測定した。
その結果、咀嚼困難者に対して問題になると考えられる通常加工品の漬物、煮豆、佃煮の「かたさ」や「皮残り」「べたつき」などが、「ソフトデリ」では改善されていることを確認することができた。
■ 学会発表の要旨:
【目的】
食材の形を保った咀嚼困難者用食品は、食欲に大きな影響を及ぼす見栄えが良いため、高齢者の健康増進に寄与することが期待される。しかしながら、固形状の食材を含む不均一な食品は、機器による正確な物性測定が困難である。
そこで本試験では、軟化処理を施した漬物、煮豆、佃煮について、人の実際の咀嚼・嚥下活動のモニタリング、数値化が可能な筋電位による測定・評価を試みた。
【方法】
試料は、咀嚼困難者用食品として加工した漬物3 種、煮豆3 種、佃煮1 種(商品名「ソフトデリ」)およびそれらの通常加工品(レギュラー)。
6 名の健常な被験者の左右の咬筋及び 骨上筋群に電極を取り付け、試料5g をランダムな順番で供試した。出来る限り自然な咀嚼、嚥下を行わせた時の咀嚼開始から嚥下終了までの筋電位を測定し、活動時間、振幅、総筋活動量、1 回あたりの筋活動量を得た。
また、高齢者にとって一般的に食べにくいとされる食品(ごぼう、ピーナッツ、ゆで卵の黄身など)と食べやすいとされる食品(がんもどき、豆腐など)の測定も行った。
【結果】
ごぼう、ピーナッツは、咬筋、舌骨上筋群ともに他の食品に比べて、総筋活動量が大きく、ゆで卵の黄身は、舌骨上筋群の時間当たりの活動量が大きくなった。漬物、煮豆、佃煮のレギュラーでは、それぞれ硬さ、皮残り、べたつきに問題があると考えられたが、咀嚼困難者用に加工することにより、それらの問題は改善され、咬筋、舌骨上筋群の総筋活動量、咬筋の振幅、舌骨上筋群の時間当たりの活動量が減少した。ソフトデリ7 種類の筋活動量は、いずれも「弱い力で噛める」食品の目安として用いたがんもどきやかぼちゃと同程度であった。
◎フジッコ株式会社
http://www.fujicco.co.jp