国土交通省は6月11日、『2012年度首都圏白書』を発表し、近い将来、東京都心部で介護施設が大幅に不足されるとの予想を示した。
それによると、平成37年の施設のサービス利用者数を推計し、平成22年の介護保険施設の定員数と比較してみると、サービス利用者数に対する施設定員数の割合が、東京23区西部では25%未満、23区周辺の地域では50%未満になると推計され、現状のままでは、将来の需要に対して介護保険施設が大幅に不足することが見込まるという。
同白書では、東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)の高齢者人口・世帯数などについても推計しているので、あわせて紹介する。
■東京圏の平成52年の高齢者人口は、22年の1.5倍に
東京圏の人口は戦後一貫して増加し続けてきたが、今後は平成27年の3,590万人をピークに減少すると推計されている。都道府県別では千葉県は平成22年、埼玉県、東京都、神奈川県は平成27年をピークに減少。一方、高齢者人口は増加し、平成22年に732万人だったのが平成52年には1,119万人と約1.5倍になると推計できる。
東京圏の世帯数は、昭和55年以降一貫して増加し、昭和55年時点で約960万世帯だったのが、平成22年には、約1,560万世帯となっている。今後は平成37年にピークを迎えた後、減少に転じると見込まれる。
一方、東京圏の高齢世帯のうち、夫婦のみの世帯と高齢単独世帯は今後も増加を続け、平成42年には、世帯数全体のおよそ4分の1の約370万世帯に達する見込みだ。
■全国の高齢者数増加の4割が東京圏に集中
東京圏の高齢者数は、平成22年から平成52年までの間に約387万人増加する見込みで、同じ期間での全国の高齢者数増加見込みが約920万人なため、その4割程度が東京圏において増加すると見込まる。
平成22年から平成52年までの高齢者数の伸び率では、東京圏の都県の高齢者数の伸び率は、全国の伸び率を上回っており、特に75 歳以上の後期高齢者の伸び率は全国が1.57 に対して、埼玉県2.03、千葉県1.95、東京都1.73、神奈川県2.01で、東京圏では高齢者数の急激な増加に対応した都市の整備が求められている。
■都心部とその周辺で介護保険施設が不足
首都圏の平成2年の可住地面積1km2あたりの高齢者数をみると、首都圏郊外部では少なく、東京都心部に近いほど多くなっている。今後の可住地面積1km2 あたりの高齢者の増加数を推計すると、東京都心部とその周辺において大幅な増加が見込まれる地域が広がると予想される。
そのため、東京都心部とその周辺の地域では、介護サービスなど高齢者向けのサービスに対する需要が増大すると予想される。平成37年の施設のサービス利用者数を推計し、平成22年の介護保険施設の定員数と比較すると、サービス利用者数に対する施設定員数の割合が、東京23 区西部では25%未満、23 区周辺の地域では50%未満になると推計され、現状では、将来の需要に対して介護保険施設の大幅な不足が予想できる。
*施設のサービスは、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設のサービス。
*平成37年の施設のサービス利用者の推計は、平成37年の性別・年齢別人口に占める要介護度別要介護認定者の割合と要介護認定者に占める施設のサービス利用者の割合を、平成22年のそれぞれの割合と同水準と仮定し、平成22年の性別・年齢別人口、性別・年齢別・要介護度別要介護認定者数、年齢別施設のサービス利用者数、および平成37年の性別・年齢別人口(推計値)を用いて算出した。
◎国土交通省
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