神戸市は、6月3日、利用者に対する虐待で市内の居宅介護支援事業所と訪問介護事業所を指定の全部効力停止処分にしたと発表した。
市によると、平成24年8月10日頃から、居宅介護支援事業所「セントケア北六甲」の管理者兼ケアマネジャーが、認知症の利用者宅の玄関をひもでくくって外に出られないようにしており、そのひもを利用者本人が自力で切ったため、8月21日からバイク用のチェーンで外側から施錠した。
利用者にサービスを提供していた訪問介護事業所「あじさいのもり神戸」では施錠について、管理者とヘルパーが知っており、サービスを提供する際はチェーンを外し、終了後は再びチェーンをかけていた。チェーンの鍵は、ケアマネジャーとサービス提供ヘルパーが保管していた。
チェーン付きの鍵で施錠されていた玄関ドア
施錠にあたって、両事業所とも本人や本人家族の了解を得ておらず、また、ケアマネジャーは、併設の地域包括支援センター(有馬あんしんすこやかセンター)などに相談をしていなかった。
これらの事実は、11月27日に利用者の知人という人物から利用者に会えないという苦情があり、介護指導課職員がケアマネジャーに連絡をとったところ、発覚した。
市では、介護保険法・高齢者虐待防止法に基づいて監査・事情聴取などを行った結果、手順を経ていない行動制限(身体拘束)であり、利用者に対する虐待と認定、2事業所の処分を決めた。なお、このことによって利用者への身体的被害は発生していない。
処分の期間は8月1日から6カ月間で、その間2事業者は、利用者への介護サービスの提供と介護報酬の請求ができなくなる。また、新規の利用者の受け入れもできない。
【事業者の概要】
(1)居宅介護支援事業所
■事業者の名称:セントケア西日本株式会社(代表取締役社長 大町恵三)
■事業者の所在地:神戸市中央区多聞通二丁目4番4号
■事業所の名称:セントケア北六甲
■事業所の所在地:神戸市北区唐櫃台2丁目23番2号富士ビル1F
■当初指定年月日:平成19年4月1日(直近更新年月日:平成25年4月1日)
(2)訪問介護事業所
■事業者の名称:株式会社日本エルダリーケアサービス(代表取締役社長 森 薫)
■事業者の所在地:東京都港区芝公園三丁目4番30号32芝公園ビル7F
■事業所の名称:あじさいのもり神戸
■事業所の所在地:神戸市北区東有野台1丁目18-1
■指定年月日:平成16年10月15日(直近更新年月日:平成22年10月15日)
【処分の理由】
・要介護者に対する人格尊重義務違反
利用者本人・家族などの了解をとらない手順を経ていない行動制限(身体拘束)があり、これは利用者に対する虐待にあたる。
・虐待事例の神戸市への報告義務違反
この事例が虐待であるにもかかわらず、両事業所とも神戸市への報告を行っていなかった。
・高齢者虐待防止に関する研修の実施が不十分
両事業所とも高齢者虐待防止・身体拘束廃止について研修を行っていたが、研修内容に沿った行動・サービス提供を実施できていなかった。
ケアマネジャーは居宅介護支援事業所の管理者であり、訪問介護事業所の管理者も今回の件について知りながら見逃していた。両者とも事業所運営の一環として研修を主宰するべき立場の者でありながら、研修の趣旨を理解できていたとは言えない。
◎神戸市
http://www.city.kobe.lg.jp/