高齢者住宅経営者連絡協議会(高経協)は、5月14日、東京都内にてシンポジウム「今、伝えたい 終の住まいの役割」を開催した。
高経協は、サービス付き高齢者住宅や有料老人ホームなどを運営する経営者の組織で、活動の基本方針を「終身にわたり、尊厳ある暮らしを支える」としている。シンポジウムから、パネルディスカッション「看取りについて」を紹介する。
ディスカッションに先立ち、医師の石飛幸三氏を講師に迎え、基調講演「平穏死~自然な最期の迎え方」が行われた。
石飛氏は、2005年より東京・世田谷の「芦花ホーム」に勤務し、全国でも数少ない特養の常勤医として終末期の看取りに関わったきた。その経験から胃ろうの是非や自然死の見直しなど、画一的に行なわれてきた高齢者の終末期医療に対し、問題提議をしている。
講演では、高齢者の終末期の特徴や、芦花ホームでの入居者と家族、多職種が互いに関わりながら行った看取りについて語られ、「本人と家族に寄り添う看取りとは何か」との基本認識を提示した。
ディスカッションには、株式会社長谷工総合研究所上席主任研究員の吉村直子氏をコーディネーターに、5人のパネラーが参加。
まず、吉村氏より「高齢者の死亡場所の各国比較」(2002年)の提示があり、日本は約8割が病院で亡くなっており、他国に比べて高い割合であることを紹介。その一方、国の世論調査などでは、最期を迎える場所として自宅とともに最近は特別養護老人ホームや有料老人ホームを挙げる人が増えており、看取りにおいて高齢者住宅が果たす役割が大きくなっていることを指摘した。
パネラーは、介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅の運営者もいれば、これらにグループホームや特別養護老人ホーなどを組み合わせて事業展開している運営者も。規模も1施設のみの運営から200以上の施設の運営までさまざまだが、いずれも看取りに積極時に取り組んでいるのが共通点だ。
介護付き有料老人ホーム1棟を運営する株式会社エヌエムライフの場合、1996年から看取りを実施。この5年間では死亡退去した65名のうち48名をホームで看取った。また、有料老人ホームとグループホームあわせて238施設と幅広く事業展開する株式会社ベネッセスタイルケアの場合も、亡くなった入居者の75%はホームで逝去しているとの紹介があった。
有料老人ホームとグループホーム、サービス付き高齢者住宅を運営する株式会社ユニマットそよ風の場合、看取りを始めた2003年から2011年までは118件だったのが、2012年は1年間で113件に。看取りの場から病院から施設へと移行していることが見てとれる報告があった。
◎高齢者住宅経営者連絡協議会
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