高齢者住宅経営者連絡協議会(高経協)は、5月14日、東京都内にてシンポジウム「今、伝えたい 終の住まいの役割」を開催した。
シンポジウムからパネルディスカッション「看取りについて」の後半を紹介する。
高齢者住宅での看取りは、実際にどのように行われていて、何がポイントになるのか。各パネラーが口を揃えたのが医療者の理解、医療との連携だ。
株式会社エヌエムライフ代表取締役の舛田典勇氏は、入居者が終末期を迎えた時、かかりつけ医が家族に伝え、家族の了解を得てから終末期のケアプランを作ること、ホームの看護師とケアスタッフ、ケアマネ、医師、クリニックの看護師が緊急の時にすぐに集まれる体制にしていることを紹介。
また、株式会社ベネッセスタイルケア代表取締役の小林仁氏は、「看取りで大切なのは、医療とご家族をいかにつなぎながら残りの時間を過ごせるか」と述べ、かかりつけ医を選定する際には、生活の延長線上で看取りを行うホームの方針を説明し、理解を得ることを重視していると語った。
「高齢者住宅の種類によって看取りに違いはあるか?」との質問を受け、株式会社ユニマットそよ風代表取締役の渡邊信義氏は、「住宅の種類が違っても、尊厳もってご利用者をお見送りするのは同じ」と語り、看取りの課題として、医師がきちんと判断していくれるかが簡単なようでいて難しく、また、全国に拠点があると地域によって看取りに対する意識に違いが見られることなども挙げた。
2004年からサ高住(以前は高専賃)の事業展開をしている学研ココファン取締役 の木村祐介氏は、「ずっといるのが家族か住宅の職員かという違いはあるが、自宅での看取りと基本的には同じ」と語り、在宅診療の医師と訪問介護が連携する中で、サ高住で看取りをするというコンセンサスがあるかどうかを課題として挙げた。
看取りを行うにあたり、欠かせないのが職員の教育だ。1992年オープンの特養などを運営する社会福祉法人生活クラブ風の村理事長の池田徹氏は、個室ユニット型の特養では職員が固定して入居者のケアすることが多いため、入居者との関係が強く、グリーフケアを重視していることを説明。「亡くなってから時をおかずに関わった職員全員が振り返りをし、何が良かったか悪かったかを話し合う。その後ご家族を招いてのグリーフケアを行う中で、職員の意識が育っていく」と語った。
株式会社エヌエムライフの舛田氏は、職員がエンゼルケアを行うことを紹介しながら、ホームで行う葬儀では入居者や職員で棺に花入れを行い、大勢の家族として葬儀を行うことの意義について語った。「高齢者住宅で満足のいく看取りをするために大切なことは?」との質問には、「家族、施設、医師との信頼関係」を挙げ、医師との情報交換の内容などは社内の報告書をそのまま家族に渡すなど、真実を介して信頼関係を作っていると語った。
また、今後高齢化がますます進む中での看取りの課題についても話が及び、社会福祉法人生活クラブ風の村の池田徹氏は、「高齢独居の世帯が増えていくと在宅での死が良いケースとは言えなくなり、人の気配がある集団住宅での死がますます必要になる」と述べ、その時、問題になるのは資力がない高齢者で、「低所得者や生活困窮者の人たちが特養だけではなく、サ高住きなどの住まいで暮らせる制度設計になるよう、力を入れていきたい」と語った。
◎高齢者住宅経営者連絡協議会
http://kokeikyo.com/
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