公益財団法人家計経済研究所は、4月、「在宅介護のお金と負担」調査の結果を発表した。
調査は、親と同居しながら介護している40~64歳の人を対象に、2011年10月の1カ月間、要介護の親のために使ったお金を「家計簿」に記帳するよう依頼して行った。
その結果、介護保険による介護サービスの費用は平均3万7,000円で、医療費など介護保険外の費用と合わせると在宅介護にかかる費用は1人当たり平均6万9,000円だった。同調査では、家族の状況や介護者の意識についても質問している。
【調査の概要】
■調査時期:2011年9月~11月(2011年10月分の家計)
■調査方法:インターネット調査
■調査対象:全国40~64歳の男女で、介護が必要な65歳以上の親(義親)と同居し、要介護者が1名の世帯
■回答者:男性206人、女性264人、有効回収数470世帯
■対象となった世帯の親の要介護度構成比:
要支援1 7.0% 、要支援2 10.4% 、要介護1 17.7% 、要介護2 18.9%、要介護3 15.5% 、要介護4 12.1% 、要介護5 8.5% 、その他(未認定など) 9.8%
主な調査の結果は以下の通り。
■在宅介護の費用は1人当たり平均6万9,000円
介護保険による介護サービスの費用は全体の平均で3万7,000円で、 内訳は介護保険のサービス利用料の1割自己負担額が1万3,000円、全額自己負担分が2万4,000円。要介護度が高くになるにつれて支出額も高くなっていた。
一方、 医療費やおむつ代などの介護サービス以外の費用は全体の平均で3万2,000円で、要介護4が最も高かった。 両者をあわせた在宅介護にかかる1ヵ月あたりの費用の合計は 全体平均で6万9,000円だった。
なお、支出額を高低順に並べて真ん中に位置する人の値を出す「中央値」では、介護サービスの費用は1万1,000円、 介護サービス以外の費用は1万5,000円、1か月あたりの合計は4万4,000円だった。 この中央値と平均値とのずれは、高額の支出があった世帯が一定数いることを示している。
また、実際には3割の世帯で「高額医療・高額介護合算療養費制度」を利用しており、その分負担は軽くなっていると推測される。
■約半数が介護開始後に収入が減ったと回答
認知症の状態別も考慮しながら要介護度別に分けて介護費用を集計したところ、「要介護4か5で、認知症も重度」という最も介護負担が重いと思われる世帯では、 支出は1ヵ月平均13万円だった。 要介護度が低い場合でも、認知症の程度が重くなると介護費用が増えていた。
介護開始前に比べて「世帯の総収入が減った」という世帯は約半数、 「世帯の総支出が増えた」世帯も男性で5割、 女性で6割にのぼり、介護によって家計が苦しくなったと感じている世帯が半数以上となった。
介護によって他の家族との関係の変化を質問したところ、「他の家族(配偶者や子どもなど)と一緒に過ごす時間が減った」「他の家族のことに思うように手が回らなくなった」という回答が、主に女性でみられた。
現在仕事をしている人を対象に、介護をしながら仕事をする際に困難と感じていることをたずねたところ「仕事のできばえ(質)に満足できない」「仕事を休みすぎ」などの声が男性に多くみられた。
介護によって仕事を離職した経験があるのは、男性13.4%、 女性27.6%だった。
◎公益財団法人家計経済研究所
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