認知症の患者自らが、自分のことを世界に向けて語ったことで、認知症への認識が一変した――その当人の言葉をまとめた本が、クリエイツかもがわから出版されている。
著者のクリスティーン・ブライデン氏は、2003年、京都で開催された国際アルツハイマー学会において、患者自らが自分のことを世に訴えた嚆矢(最初)の人として名高い。以来、NHKのドキュメンタリーなどメディアへの露出も多く、認知症が「何もわからなくなる病気」ではないこと、患者本人が一番苦しんでいることなどを世に知らしめ、偏見を説いた功績は大きい。
キャリアウーマンだったクリスティーンは、46歳でアルツハイマー型と診断された。以後、自分自身の経験を本に書き、講演を行っている。そればかりか、診断の三年後、結婚相談所を訪ねて二度目の結婚までしてしまう。そして書いた二冊目の本の題名は『認知症とダンスを』。クリスティーンが言うことなすことのすべてが、従来の認知症の常識をひっくり返すものだった。
同書には、日本での講演で語られた全文をはじめ、クリスティーンが今回新たに寄せてくれたメッセージやQ&Aも収録。医療やケアの現場で、認知症の人に係っている人は、ぜひ一度手に取ってもらいたい。
■書名:『扉を開く人 認知症の本人が語るということ』
■目次:
はじめに これから認知症になる人へ
第一章 認知症新時代の幕開け
第二章 クリスティーンの現在
第三章 クリスティーンの言葉をどう受け止めるか
第四章 認知症とともに生きる心の旅
■著者:クリスティーン・ブライデン
■監修:永田久美子
■出版社:クリエイツかもがわ
■価格:2,100円(税込)
■仕様:A5判/204ページ
◎クリエイツかもがわ
http://www.creates-k.co.jp/
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