<孤独死対策(2)>高齢者の孤立防止対策、行政の限界は?――総務省調査

総務省は4月、「高齢者の社会的孤立の防止対策等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」を公表した。その中から社会的に孤立している高齢者の把握の状況についての要旨を紹介する。

■社会的に孤立している高齢者の把握(情報の一元化)の必要性
高齢社会対策大綱」では、社会的に支援を必要とする人々が社会から孤立することなく生活を営むことができるよう、体制の整備とそのための施策を推進していくことを言及している。
施策を推進するためには、まずは、対象となる「社会的に支援を必要とする人々」がどの程度存在しているのか、リスクの状態や必要な支援、行政に対してどのようなニーズをもっているのか、その動向や孤立に至る要因はどのようなものか、実態を的確に把握することが必要となる。

そこで、厚生労働省は、市区町村など福祉担当部局で生活困窮者についての情報を一元的に受け止める体制を構築するため、市区町村の関係部局や他機関との連携の強化を進めている。以下に、それらの連携の形を紹介する。

■市区町村の関係部局・他機関との連携
厚生労働省は、「生活に困窮された方の把握のための関係部局・機関等との連絡・連携体制の強化の徹底について」(平成24年2月23日)において、生活に困窮した者に関する情報が地方公共団体の福祉担当部局に確実に伝わるよう、関係部局・他機関との連絡・連携体制について強化を図り、生活に困窮した者の把握や必要な支援に努めるよう依頼してきた。

しかし、生活困窮から滞納し、水道・電気などライフラインが止められ、死亡に至る事件が発生していることや、一部の地方公共団体で連絡・連携体制が十分に図られていない実態も見受けられるとして、改めて地方公共団体の福祉担当部局にこれらの情報を一元的に受け止める体制を構築するよう依頼している。

■市区町村から民生委員に対する高齢者の個人情報の提供
地域で孤立するおそれのある高齢者の見守り活動において、日頃から高齢者等の家庭を訪問し、相談援助活動を行う民生委員の役割を重視。平成23年1月20日に開催された全国厚生労働関係部局長会議(厚生分科会)において、都道府県などに対し、市区町村が民生委員高齢者の個人情報を提供するよう依頼している。

■市区町村から地域包括支援センターに対する個人情報の提供
都道府県などに「地域包括支援センター等において地域の見守り活動等を構築していく際の支援を必要とする者に対する個人情報の取扱いについて」(平成22年9月3日付・老健局振興課長事務連絡)を発出し、地域包括支援センターと市区町村が保有する情報の共有化の推進を依頼している。

また、同じ事務連絡にて、「要援護者に係る情報の把握・共有及び安否確認等の円滑な実施について」(平成19 年8月10日付)を引用し、「本人からの同意がない場合でも、地方公共団体の個人情報保護条例で保有個人情報の目的外利用・第三者提供を可能とする規定を整備することにより、個人情報を他の機関と共有することができる」とし、他機関との情報の共有に積極的に取り組むよう依頼している。

■要保護高齢者を把握するための福祉事務所と関係機関の連携
平成22年に生活困窮者が公共料金等を滞納し、電気・ガス等の供給が止められた中、記録的な猛暑により死亡した事例が発生したことから、都道府県等に対し、「要保護者の把握のための関係部局・機関等との連絡・連携体制の強化の徹底について」(平成22年10月1日付・援護局保護課長通知)を発出。電気などの供給停止に際し、事業者と連携して福祉事務所の連絡先を紹介する取り組みや、事業者が生活困窮者と把握できた場合に供給停止について柔軟な対応がとれるよう、事業者と認識を共有する措置を講ずるように依頼している。

また、この翌年には、「要保護者の把握のための関係部局・機関との連絡・連携体制の強化の徹底について」(平成23年7月8日付・援護局保護課長通知)を発出し、前述の通知内容を実施するための体制づくりや関係機関の連携を十分に図ることを依頼している。

高齢者の孤立の防止などを踏まえた地域福祉計画等の策定
社会福祉法第107条・108条の規定により、市区町村は地域福祉の推進に関する事項を定めた「市町村地域福祉計画」を、都道府県は市区町村の地域福祉の支援に関する事項を定めた「都道府県地域福祉支援計画」を策定することとされている。

厚生労働省は、「市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画の策定及び見直し等について」(平成22年8月13日付・援護局地域福祉課長通知)にて、これらの計画は高齢者などの孤立にも対応可能なものであるとし、都道府県に対し、地域福祉計画を策定していない市区町村に対する支援や働きかけの強化などを適切に行うよう要請している。

すでにこれらの計画を策定している場合は、高齢者の孤立の防止などを踏まえた対応に有効な内容となっているか点検し、必要に応じて見直しを行うなど対策を講ずるよう言及。
また、地域福祉計画には、前述の通知「要援護者に係る情報の把握・共有及び安否確認等の円滑な実施について」により、地域における要援護者について情報の把握・共有方法などを盛り込むこととしている。

国は、「高齢社会対策大綱」においても、要援護者についての情報の把握・共有・安否確認などの方法を盛り込んだ地域福祉計画の策定を都道府県と連携しながらより促していくこととしている。

レポートにはこれら社会的孤立の防止対策のほか、災害時における高齢者の保護についても言及されている。

◎総務省
http://www.soumu.go.jp/

高齢者の社会的孤立の防止対策等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告
http://www.soumu.go.jp/main_content/000217313.pdf

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