東京都介護支援専門員研究協議会(CMAT)が主催した第3回研修会「認知症高齢者とケアマネジメント」3つめのプログラムより、順天堂大学医学部付属順天堂東京江東高齢者医療センター准教授の眞鍋雄太氏による「レビー小体型認知症について」を報告する。
認知機能障害や幻視、パーキンソン症状などで知られるレビー小体型認知症は、1976年に小阪憲司氏(横浜市立大学名誉教授)によって発見されたが、パーキンソン病やアルツハイマー病と病理所見が共通しているなどのため、病名が確定するまでに20年を要した。
老年期の認知症疾患でアルツハイマー病に次いで2番目に多く、病気が広く知られるようになった現在においても、病相によってはパーキンソン病やアルツハイマー病と誤診されるなど適切な診断・治療がなされていないケースもある。
講演では、レビー小体型認知症がどのように発見・認知されていったのか、その経緯をたどりながら、この病気の特質や診断、治療のポイントについて説明された。
■レビー小体型認知症は、パーキンソン病と同じ原因物質で発症する
レビー小体型認知症は、α-シヌクレインというたんぱく質が原因物質となる「レビー小体病」のひとつで、レビー小体病には、レビー小体型認知症、パーキンソン病、自律神経障害、レム睡眠行動異常の4つがある。
「α-シヌクレインがどの場所に沈着するかで症状や疾患が決まります。脊髄にたまると立ちくらみや発汗、便秘など自律神経の症状がメインになる自立神経障害、視床下核や扁桃核などにたまるとレム睡眠行動異常、黒質という場所を中心にたまるとパーキンソン病、大脳全体にたまるとレビー小体型認知症になります」。
■レビー小体型認知症の症状-アルツハイマー病やパーキンソン病との違い
レビー小体型認知症は病理所見がアルツハイマー病と同じで、かつてはアルツハイマーの合併症と考えられていたこと、約20年前まではパーキンソン病は認知症の症状が出ないとされていたことが、この病気のわかりにくさの原因になっていたという。
・アルツハイマー病の症状との違い
レビー小体型認知症で見られる認知機能障害は、しばしばアルツハイマー病の認知機能障害と混同されるが、「アルツハイマー病では海馬が障害されることにより、ものを思い出せない、約束を忘れるなどの記憶障害が起こりますが、レビー小体型認知症の認知機能障害の典型例はものを見て理解はするが、模写ができない『視覚構成把握障害』です。そのため、最初にできなくなるのが、認知機能を評価するツールにある重なった2個の5角形を書くことです。一方、アルツハイマー病では最後まで書くことができます」。
・パーキンソン病の症状との違い
レビー小体型認知症では、パーキンソン病のように手のふるえが見られることがあるが、パーキンソン病とは異なるふるえ方だという。
「レビー小体型認知症の診断基準にある『薬物性ではないパーキンソン症状』がそれです。パーキンソン病では安静時震戦といい、何もしていない時に手がふるえ、両手にふるえが出ている場合はふるえの強さに差があります。動作をしている時に手のふるえが見られ、両手に同様に出ている場合はレビー小体型認知症を疑うべきです」。
その一方、レビー小体型認知症ではパーキンソン症状を伴わないものもあり、そうしたケースではアルツハイマー型認知症と誤診されている場合もあるそう。「このようなケースは、レビー小体型認知症大脳型といわれており、立っている時の血圧の差と座っている時の血圧の差が大きいなど自律神経障害が強いのが特徴で、そこがアルツハイマー病との違いです」。
■レビー小体型認知症の治療
レビー小体型認知症の治療は、治療対象とする症状に優先順位をつけることがポイントになる。
「認知症疾患の治療の原則でもありますが、高齢者の特性に配慮し、優先順位をつけることが大切です。幻視とパーキンソン症状を一度に治療しようとし、相反する薬を使うことになり、症状が悪化するからです。本人や家族にどの症状にいちばん困っているかを聞き、幻視に困っているのならまず先に幻視に対処します。また、レビー小体型認知症は、抗精神病薬に対する過敏性があることを理解することが大切です」。
幻視などBPSDの治療として第一選択薬となるのがアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(アリセプトなど)で、メマリーはBPSDに有用性が高いが、レビー小体型認知症には少量を使うべき、抑肝散は2週間使って有用性を確認するなどの説明があった。
◎東京都介護支援専門員研究協議会(CMAT)
http://cmat.jp/
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