<脳卒中リスク>肉や乳製品のとり過ぎは心筋梗塞の原因に――国立がん研究センター

国立がん研究センターは、3月11日、肉や乳製品に含まれる飽和脂肪酸を多く取ると、脳卒中のリスクが下がる一方、心筋梗塞を発症しやすくなるとの研究結果を発表した。

肉やバター、乳製品など動物性の脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸は、日本人の食事の多様化により、以前に比べて多く摂られるようになった栄養素。同センターでは、1990年より全国で食事を含む生活習慣についてのアンケート調査を開始。5年後、同一対象者に再度調査を行い、いずれの時点でも循環器疾患やがんになっていなかった男女約8万2,000人を約11年間追跡した。

これらの調査結果をもとに、飽和脂肪酸摂取量と脳卒中虚血性心疾患発症との関連を調べたところ、「飽和脂肪酸摂取は、多すぎても少なすぎても良くない」という結論が得られた。
同研究とこれまでに日本や欧米で実施された複数の研究を総合的にみると、脳卒中並びに心筋梗塞の発症リスクが低いのは、飽和脂肪酸の摂取量が1日に20g前後の集団と考えられるという。

食生活と健康長寿との関係がさまざまに言われるなか、「肉を食べ過ぎると長生きできない」「高齢期こそ肉を食べるべき」など相反する意見があるが、極端に走るのではなく、バランスのいい食生活を見直すことが大切と言えるようだ。

【調査研究の概要】
■調査の手法
1)1990年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部の4保健所管内に住む40~59歳の男女に食事調査を含む生活習慣についてのアンケートを実施。1993年には、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の5保健所2012年現在)管内に住む40~69歳の男女に同様のアンケートを実施。

2)それぞれ5年後の1995年と1998年に、より詳しい食事調査を含む2回目のアンケートで当時の生活習慣について調査した。そのうち、1回目と2回目の調査時点で循環器疾患にもがんにもなっていなかった男女約8万2,000人を2回目の調査時点から平均約11年追跡した。

3)アンケートに回答した約8万2,000人の結果から1日当たりの飽和脂肪酸摂取量を計算し、摂取量の順にグループ分けして、その後の約11年間に脳卒中にかかった人の割合をグループ間で比較した。

■飽和脂肪酸を食べる量が少ないグループで脳卒中のリスクが上昇
期間中に合計3,192人が脳卒中となり、内訳は、脳梗塞1,939人、脳出血894人、くも膜下出血348人だった。
分析の結果、1日に食べる飽和脂肪酸が多いほど、脳出血や脳梗塞による発症リスクは低かった。脳卒中全体としては、飽和脂肪酸を最もたくさん摂取する群でリスクが最も低く、最も少ない群に比べて発症リスクが23%低い結果となった。

特に、脳出血の中でも日本人に多い、脳の奥深くにある細い血管から出血するタイプ(深部脳出血)では、飽和脂肪酸が多くなるにつれ、発症率が段階的に減少していく様子が見られた。
同じように脳梗塞の中でも日本人に多い、脳の奥深くにある細い血管がつまるタイプ(穿通枝脳梗塞)でも、飽和脂肪酸が多い群の方が発症率が低い結果となった。
なお、くも膜下出血や、欧米に多い脳の太い血管がつまるタイプ(皮質枝脳梗塞)については、飽和脂肪酸摂取との関連は見られなかった。

■飽和脂肪酸を食べる量が多いグループで心筋梗塞のリスクが上昇
一方、心筋梗塞ではまったく逆の関連が見られた。期間中に合計610人が心筋梗塞にかかり、同じように飽和脂肪酸の摂取量と心筋梗塞の発症との関連を調べると、飽和脂肪酸の摂取量が多くなるにつれ、心筋梗塞の発症率は高い結果となった。この関連は、特に男性で明確に見られた。

また、脳卒中心筋梗塞・急性死をあわせた全循環器疾患との関連では、飽和脂肪酸を最もたくさん摂取する群でリスクが最も低い結果であり、最も少ない群に比べて発症リスクが18%低下した。この集団においては、心筋梗塞よりも脳卒中の発症数が多く、循環器疾患全体としては、脳卒中によるリスク低下の影響が大きかったため。

■研究から言えること
従来、飽和脂肪酸は血清のコレステロール値を高くし、将来的に粥状動脈硬化になりやすくなることから、摂取を控えるような指導がなされることがあった。一方で、最近の結果から、飽和脂肪酸は無害であり、制限する必要はないという説もある。
今回の研究結果からは、「飽和脂肪酸摂取は、多すぎても、少なすぎても良くない」という結論が得られた。
この研究と過去の日本や欧米で実施されたいくつかの研究を総合的にみると、脳卒中心筋梗塞の発症リスクが低いのは、飽和脂肪酸の摂取量が1日に20g前後の集団と考えられる。そのような人の食事を今回の研究で用いたアンケート調査結果に当てはめてみると、牛乳を毎日コップ1杯(200g)、肉を2日に1回(1回につき150g程度)の摂取だった。

ただし、一般に、食物摂取頻度アンケート調査は、それだけで実際の摂取量を正確に推定するのは難しく、年齢や時代・居住地域などが限定された対象集団の値を一般化することは適当とは言えないため、示した摂取量は参考値として考えるぺきである。
また、今回の研究は、がん、脳卒中心臓病の既往のある人は除いており、これらの病気にかかったことのある人にはこの結果はあてはまらない。

◎国立がん研究センター
http://www.ncc.go.jp/jp/

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