2013年4月から、介護職の入り口となる資格の名称と研修内容が変わった。これまで実施されていた「訪問介護員養成研修2級課程(以下、ヘルパー2級)」が廃止になり、代わって「介護職員初任者研修」がスタートしたのである。研修時間数は共に130時間のヘルパー2級と初任者研修。内容はどう違うのかを、以下に紹介する。
■初任者研修には試験がある
変更点はいくつかあるが、中でも大きな変更点は2つ。
一つは、130時間の研修修了後、初任者研修では修了評価試験が実施されることだ。これまでヘルパー2級は出席さえすれば資格が取得でき、実際には介護の知識や技術が身についていなくても現場に出られるのはおかしいという厳しい声があった。そこで初任者研修では、修了後に1時間の試験を実施。これに合格して初めて初任者研修修了と認められることとなった。
修了評価試験の内容について、東京都では以下のように規定している。
(1)出題範囲
項目2から項目9(1)~(12)までの32科目
(2)出題内容
東京都介護職員初任者研修事業実施要綱の「各項目の到達目標、評価、内容」内の「修了時の評価ポイント」を網羅したもの
(3)出題数
32題以上(各科目から1題以上)
(4)出題形式
選択式、記述式を問わない
※東京都福祉保険局「修了評価のための筆記試験について」より
■実習が必須でなくなり演習時間増加
もう一つは、ヘルパー2級で行っていた施設や訪問介護事業所での30時間の実習が、初任者研修ではカリキュラム上、必須ではなくなったことだ。介護現場の見学や実習は、「1.職務の理解」や「10.振り返り」の中で行っても、1~10のカリキュラム外で行ってもよいとされている。
実習がなくなった分、教室内での演習の時間が増えた。「9.こころとからだのしくみと生活支援技術」では、75時間中、通信教育での自宅学習が可能なのは12時間分だけ。残りの63時間は教室で受講することとされている。移動、食事、入浴、排泄などに関する生活支援技術の演習を行い、終了時点では「指示に基づいて介助できること」を確認するためだ。
このほか、初任者研修のカリキュラムには「7.認知症の理解」という科目が新たに加わった。ヘルパー2級では、「老人及び障害の疾病、障害等に関する講義」などでわずかに触れるだけだった認知だが、今後、患者は300万人を超えることが予測されてるため、認知症の心理や行動、コミュニケーションの取り方、介護の原則などについて最低限の知識を身につけさせることが目的だ。また、多職種連携を意識し、「4.介護・福祉サービスの理解と医療との連携」には、サービスの理解に「医療との連携」というカリキュラムが付け加えられている。
■現ヘルパー2級所持者はそのまま
ではなぜ今回、介護職の研修体系が大きく見直されたのか。初任者研修の開始には、段階を踏んで国家資格である介護福祉士取得へとつなげていくという国の政策意図がある。初任者研修130時間の上位研修には、450時間の「実務者研修」がある。これは以前の「介護職員基礎研修」を改変したもの。ヘルパー2級あるいは初任者研修修了者は、追加して320時間を受講すれば実務者研修の修了資格が得られる。
そして、平成27年度から介護福祉士試験の受験資格を得るためには、実務経験3年に加え、この実務者研修の修了が必須となる。初任者研修から知識や技術を積み上げていけるようにカリキュラムを組み、初任者研修→実務者研修→介護福祉士とステップアップしやすいようにしたのだ。たとえば、前述の「9.こころとからだのしくみと生活支援技術」は、介護福祉士養成のカリキュラムの3領域の一つ、「こころとからだのしくみ」につながるよう設けられている。
ちなみに、ヘルパー2級から初任者研修に変わってカリキュラムに変更はあったものの、ヘルパー2級修了者はそのまま初任者研修修了者として扱われる。初任者研修を受講し直す必要もなければ、ヘルパー2級修了資格では介護職として働けなくなることもない。ヘルパー2級修了資格のままでこれまで通り働くことができるが、国としては、いずれ介護職=介護福祉士にしていきたいと考えていることは知っておいた方がいいだろう。
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