東京都が2月20日に開催した「終活~上手な遺言とエンディングノートの活用~」、後半では、遺言に書くべきこととしてお墓と相続についての説明があった。
講師の小谷みどり氏は、「遺言は法的拘束力があり、死んでから効力を発揮する」と述べた。自筆でなければ法的に認められないが、自筆であっても条件を満たしていないと認められない場合もあるため、公証人役場の公証人に作成してもらうことが最善であるという。作成した遺言は公証人役場でも保管するため、改ざんされる心配もないと述べた。
お墓については、1.お墓に入るか、入らないか。2.誰と入るか(1人で、夫婦で、家族で、先祖代々、友人たち、血縁を超えた人たち)、3.管理方法(継承を前提にする、期限付き/永代供養)。例えば、○○とは一緒の墓に入りたくないといった意志も表明しておく。
相続は2種類ある。ひとつは祭祀財産。1948年施行の現民法には、系譜(家系図)、祭具(位牌)、墳墓の所有権は祖先の祭祀を主宰すべきものが承継する。つまり、複数の人間で分配してはならないとされている。
■財産は嫁や婿にも分与できる?
一方、相続財産は遺された家族が法律にのっとって分け合うものであるため、もめごとを起こしやすい。その原因のひとつは、相続財産の56%は不動産(国税庁2009年データより)であるため、遺産を平等に分配するのが難しいことがあげられる。また音信のない相続人、見知らぬ相続人の出現などのほか、離婚や再婚で相続が複雑化していることも原因となっている。遺産分割に関するもめごとを防ぐために、遺言作成は非常に重要であると述べた。
ほかにも、遺言作成は、自分の意思で財産を処分できるというメリットがある。例えば、嫁や婿は相続人ではないため寄与分がないが、遺言に記載すれば遺贈することができる。慈善団体に寄付したい、自分を虐待した子には遺産をあげたくないといったことも可能になる。ただし、遺産をあげたくなくても法定相続人は「遺留分減殺請求」ができるので、希望が叶わない場合もある。
■遺言は思い立ったらすぐに書くべし!
また、遺言作成により、相続の手続きが簡素化できるというメリットもある。前の配偶者の子と、現在の配偶者の子が交流がない、子がいない、相続人同士が仲が悪い、認知症や知的障害者などの相続人がいる、行方不明者や海外居住の相続人がいるといった場合でも、遺産分割協議書は不要になる。
小谷氏は「遺産5,000万円以下のもめごとが増えている」というグラフを示し、もめごとを回避するためには財産が少ない人ほど遺言を作成しなければならないと強調した。自宅の土地建物以外に現金を持っている人は遺産の分割がしやすいため、もめごとになりにくいが、国民の多くは自宅の土地建物が主たる財産である。自宅の土地建物は分割できないため、それがトラブルの原因になるからである。
最後に小谷氏は、「多くの人は終活をいつでもできると思っているが、それはいつまでもやらないことと同義である」と述べ、今すぐ始めることを推奨した。
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