民間調査の株式会社富士経済は、国内のジェネリック医薬品市場を2012年11月から2013年1月にかけて調査し、このほどその結果を発表した。
調査は、同社の専門調査員による参入企業や関連企業・団体などへのヒアリング、関連文献調査、社内データベースを併用して行い、長期収載医薬品(特許が切れた先発品で、ジェネリック医薬品のある厚生労働省が定めた医薬品)の市場も対象にしている。
調査結果によると、ジェネリック医薬品市場は2011年に前年比8.1%増、4,840億円と成長。2015年には4年間で41.3%伸びて6,837億円になると予測されるとしている。
薬効領域別では、高血圧症・肺高血圧症治療剤、抗がん剤(がん関連用剤含む)、抗生物質の市場規模が大きい。また、認知症治療剤「アリセプト」(エーザイ)、糖尿病治療剤「アクトス」(武田薬品工業)のジェネリック医薬品が牽引したことで、2011年の脳疾患治療剤・認知症治療剤市場は2010年比2.5倍、糖尿病治療剤市場が同27%増となった。
調査結果は、報告書「2012-2013ジェネリック医薬品・長期収載品データブックNo.2市場編」にまとめられている。以下に主な結果を紹介する。
■後発医薬品調剤体制加算で、調剤薬局や診療所での伸びが目立つ
ジェネリック医薬品市場は2011年に前年比8.1%増、4,840億円と成長。2015年には4年間で41.3%伸びて6,837億円になると予測。ジェネリック医薬品と長期収載医薬品を合わせると15の医療用医薬品市場の36.7%を占めると予測される。
ジェネリック医薬品は、DPC(診断群分類包括評価)導入病院のジェネリック医薬品への切り替えが一段落し、院内処方への広がりは鈍化しているが、診療報酬改定に伴う後発医薬品調剤体制加算により調剤薬局や、診療所への広がりが続いている。 長期収載医薬品は薬価改定の影響が大きく、ジェネリック医薬品の浸透により実績縮小しているものも多いが、毎年大型の医薬品が長期収載医薬品に指定されるため、この市場も微増で推移している。
■高血圧症・肺高血圧症治療剤の傾向
「ジェネリック医薬品 2011年484億円 2015年予測690億円 2011年比142.6%」
現状のジェネリック医薬品はCa拮抗剤ベシル酸アムロジピンで、発売当初先発薬の市場規模が大きかったことから、多くの企業が参入することとなり、市場は拡大し続けている。
高血圧症・肺高血圧症治療剤は高齢者の患者が多く、慢性疾患であるため服薬が長期にわたるため、経済面から切り替え需要が高い。後発医薬品調剤体制加算もあり、市場の拡大と共に調剤薬局での実績が高まっている。
今後も患者の増加は続き、高血圧症治療薬のARBでは2012年の「ニューロタン」(MSD)を皮切りに上位ブランドの特許が切れることから、一層ジェネリック医薬品の拡大が予測される。
■抗がん剤(がん関連用剤を含む)の傾向
「ジェネリック医薬品 2011年432億円 2015年予測510億円 2011年比118.1%」
がん患者は増加傾向で、がん検診などにより早期発見、早期治療を行う患者が増えている。また外来で化学療法治療を受ける患者も増えている。抗がん剤は分子標的治療剤を中心に新薬の発売が相次いでいることや、これらの適応拡大により治療患者の取り込みが進み市場は拡大している。
ジェネリック医薬品市場では、カルボプラチン、ビカルタミド、パクリタキセルの3成分のジェネリック医薬品への切り替えが進んでおり、中でもビカルタミドは経口剤であることから、後発医薬品調剤体制加算の影響を受け調剤薬局で実績が拡大している。今後もジェネリック医薬品への切り替えが進み、市場は拡大を続ける。将来、特許切れが続くほか、「ハーセプチン」(中外製薬)、「リツキサン」(中外製薬)などのバイオシミラーの市場もプラス要因となる。
■脳疾患・認知症治療剤の傾向
「ジェネリック医薬品 2011年68億円 2015年予測370億円 2011年比5.4倍」
認知症治療剤は、「アリセプト」(エーザイ)の特許切れでジェネリック医薬品が相次いで発売され拡大を続けている。脳卒中急性期治療剤は、トップブランド「ラジカット」(田辺三菱製薬)とそのジェネリック医薬品との競合でジェネリック医薬品への切り替え需要を取り込んで今後市場は順調に伸びることは間違いないが、価格競争に陥り数量の伸びに比べて金額市場は伸びない可能性もある。
◎株式会社富士経済
http://www.fuji-keizai.co.jp/
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