矢野経済研究所は、2012年12月、全国の60代を中心とした男女1,000名(男性500名、女性500名)を対象に、インターネット上でIT情報端末に関するアンケート調査を行い、その結果を発表した。ITが現在の60代前後にどこまで普及しているのか、ここではシニアの情報端末や情報収集に関する結果を取り上げ、分析する。
この調査は、人口も貯蓄も多く、マーケットをけん引するターゲットであるシニアの興味・関心とともに、情報端末や情報収集に関する動向などを明らかにすることで、シニアの生活スタイルを把握することを目的としている。なお、本調査対象の主に60代を中心とした男女について、ここでは「シニア」としている。
■シニア層の趣味
シニア層の趣味(複数回答)についてたずねたところ、「旅行」(61.8%)が最も高く、次いで「パソコン」(59.6%)、「園芸・庭いじり・ガーデニング」(35.3%)、「読書」(35.1%)、「運動・スポーツ」(26.5%)、「映画」(26.4%)と続く。
「パソコン」が趣味と回答したシニアが6割にも達し、思った以上にITがシニア層にも浸透していることが明らかとなった。また、インドア・アウトドアを問わず、趣味範囲は多岐にわたり、自分自身の興味のあることに関してアクティブに行動している姿がうかがえる。
■来年チャレンジしたいこと
来年チャレンジしたいことがあると回答したシニア層では「旅行(43.6%)」が最も高い比率であったが、「運動・スポーツ(29.4%)」や「園芸・庭いじり・ガーデニング(22.8%)」とともに、「スマートフォン・タブレット端末などの最新ITツール(26.8%)」が上位に挙がった。
これは、まったく新しいチャレンジだったり、長年実現したいと考えていた計画であったりと、さまざまあることだろうが、「旅行」や「園芸」「スポーツ」などは、最初の「趣味」の項目とも重なる結果となった。
IT関連では最新のツールに関心を示し、試したいと考えるシニア層が4分の1にものぼることがわかった。
■日常的にインターネットを活用し、利便性を実感
この調査におけるシニア層においてはパソコンの利用率はほぼ100%であり、インターネットを利用する頻度(単数回答)は、「ほぼ毎日(週5 日以上)」が93.9%と、9 割のシニア層は日常的にインターネットを利用していることがわかった
またインターネットを使うことで生活が便利になっているか(単数回答)については「非常に便利になっている」(44.9%)、「便利になっている」(45.6%)の合計で9 割を占め、多くのシニアがインターネットの利便性を実感していることが示されている。
またインターネットの利用目的(複数回答)は、「情報収集(検索)」(92.7%)が最も高く、次いで「メール」(86.7%)、「ネットショッピング(買い物)」(77.7%)、「ネットバンキング(銀行)」(56.0%)、「価格比較サイト・評価サイト」(49.5%)と続く。大半はすでに日常的にインターネットを経由した情報収集を行い、サービス提供を受けていることが示されている。
■商品購入時に最も重視する点は「操作のしやすさ」
シニア層の4割強は最新のITツールに関心があると回答しており、今後、欲しいと思っている最新のITツール(複数回答)について、「スマートフォン」(41.0%)、「タブレット端末」(30.2%)が上位項目であるが、商品の購入基準は、機能やデザイン、ブランドよりも、実際の使い勝手のよさを最も重視していることが示されている。
今回の調査結果から、シニア層は日常的にパソコンを使用し、インターネットを活用しながら、情報収集やメール、ネットショッピングをはじめ多様なサービスを日常的に入手している姿が浮き彫りとなった。この調査がインターネット上で実施され、一般のシニアよりもパソコン利用やインターネット活用に積極的であることを考慮しなければならないが、それでも高い利用比率を示しているものと考える。
この背景にはアクティブに行動するシニア層にとって趣味の範囲が多岐にわたることもあり、情報収集や情報交換が不可欠であると推測され、その一つの手段としてインターネットの利便性が重視されてきているものと考える。
事実、本調査結果から9 割のシニア層はインターネットの利便性を実感していることが示されており、概してIT 端末にはそれほど抵抗感のない姿もうかがえる。
一方でやはり操作のしやすさはシニア層にとっては最も重視されるものであり、最新IT ツールを含めた商品購入時には多機能やデザイン、ブランドよりも使い勝手を優先させることも示されている。
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