11月11日の介護の日、2012年「介護の日」セミナーが都内で開催された。
「介護の日」セミナー10周年となる今年は、「がんばらない介護生活~介護と幸せな人生の両立」をテーマに、専門職向け、一般市民向けの講座を複数開催した。
専門職向けに開催されたセミナーでは、「認知症の早期発見」をテーマに、敦賀温泉病院院長で精神科医の玉井顯氏が講演を行った。玉井氏は、昨年ロンドンで開催された国際アルツハイマー学会に出席。そこで得た、認知症に関する最新の情報を紹介した。
それによると、現在、認知症診断のガイドラインとされているアメリカ精神医学会による DSM-IVが改訂され、DSM-Vとして来年5月に発表されると紹介。新たな診断ガイドラインでは、記憶障害が必須でなくなったことが注目されると語った。
■新たな診断基準では「記憶障害」は必須項目から外れる
認知症といえば、誰もが思いうかべるのが「記憶障害」だが、現在ではアルツハイマー型認知症以外にも、ピック病、レビー小体型など、さまざまな症状の認知症が確認されており、必ずしも記憶障害の症状が現れないものもある。新しい判断基準は以下の6点。
【DSM-Vにおける認知症判断基準】
・注意
・学習と記憶(記憶障害が必須ではなくなった)
・言語
・実行機能
・視覚構成認知
・社会的認知(社会脳:家族や社会との関わりに必要な認知機能―共感、表情認知、他者理解)
■認知症とは「脳にゴミがたまる病気」
また、玉井氏は「認知症とはどういうものか?」という問いに対して、以下のような分類をして説明した。
●脳にゴミがたまる病気(異常タンパク)
・アルツハイマー病
・レビー小体病(パーキンソン、幻視)
・ピック病(怒りっぽい)
●血管性認知症(より予防が重要)
●その他 内科、外科(治療可能)
そして、現在、もっとも患者が多いといわれる「脳にゴミがたまる病気」では、脳のどの部分にゴミがたまるかによって、生じる症状が異なることを図で示した。たとえば、記憶を司る海馬にゴミがたまると「物忘れ」が、学習や問題解決などを司る前頭葉にゴミがたまると「計画できない」障害がおこる。
逆に言えば、ゴミがたまらない場所を司る能力は障害されない。一例として、重いアルツハイマー病の人が、昔覚えたピアノだけは達者に弾くことができたり、自動車の運転ができたりすることがある事例を紹介した。
――<セミナーレポ2>へ続く
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