東京都は11月10日、在宅療養推進シンポジウム『在宅療養における病状変化在宅療養における病状変化と急変時の対応』を開催した。
介護が必要になっても、あるいは終末期でも住み慣れた自宅で過ごしたい――そんな思いを形にするのが在宅療養。今回は、その心構えや、病状変化時の対応等について専門家が提言を行った。
第一部では、杏林大学医学部附属病院副院長の呉屋朝幸氏と、公益財団法人日本訪問看護財団常務理事の佐藤美穂子氏両名の基調提言があった。
在宅療養では、病状の変化に周囲が対応可能であることが求められるが、呉屋氏によれば、病状の変化とは「病気の変化が想定内の出来事であり、時間的にも緩徐な変化」であること意味し、対応法としては、在宅医・訪問看護師へ相談、一時的な入院、病院担当医(主治医)に受診・入院の3つがある。
一方、急変とは「予期しない病気の急激な変化により生命に危険を伴う状態」であり、病院担当医(主治医)に受診・入院、救急受診(救急車の要請)が対応法であるとの見解を述べた。予期しない病気とは、たとえばガン末期の患者に心筋梗塞や脳卒中など別の病気が発症したケースを指す。
救急車を要請して救急医療のコースにのってしまうと、本人と家族が望んでいないにも関わらず延命処置を受けることになる。望んでいない救急医療を回避するためには、1)「病状の変化」と「急変」を明確に区別する。
2)在宅療養患者を支援する在宅医、訪問看護、介護、薬剤師は、特に「病状の変化」と「急変」を区別して用いる。
この二つが重要であると話したうえで、在宅医療の現場で慣用的に「急変」と呼ばれていた状態を「病状の変化」という言葉で表現しようという提言を行った。
また、在宅看取りを考えていても、患者本人や家族の決心は変わるものだということを在宅医療従事者は受容し、それを前提にしたうえで本人と家族の合意形成を支援しなければならないと話した。
一方、佐藤美穂子氏は、訪問看護師の立場から「急変回避をめざして、サインを見逃さない」というテーマで現状の取り組みを紹介。次いで、看取りの症状を急変としないための訪問看護のあり方について提言があった。
在宅での看取りを希望された場合は、症状変化は終末期には起こるべくして起こるため、その準備体制が大切であり、予測される状態のプロセスとそのときの対応方法を家族や介護者(ホームヘルパー含む)、ケアマネジャーらが共有することが重要であると話した。また、本人・家族の急変の不安を軽減し、予測される事態に対して対応力を強化する支援の重要性も訴えた。
―――シンポジウムレポ(2)へ続く
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