東京都は10月23日、東京都庁都民ホールにて、医薬品の適正使用の普及啓発を目的とした「薬と健康の集い」を開催し、その一部として、社団法人東京都薬剤師会常務理事の一瀬信介氏によるおくすり講座「知っておきたい薬の知識——市販薬と上手に付き合うために」が行なわれた。
風邪のひきはじめや軽い頭痛など、不調だけど病院に行くほどでもない時にお世話になる市販薬。身近な市販薬といえども、安全な取扱いは必須。特に体の機能が低下している高齢者には十分な注意が必要だ。講演から日々の健康管理に役立つ薬の知識を紹介する。
■薬の性質を理解する−「主作用」と「副作用」の関係
薬には、「主作用」と「副作用」があり、主作用とは、期待される効き目のこと。一方の副作用は、薬剤が目的の細胞や組織以外に働くことで起きる、期待されない作用。主作用と副作用は表裏の関係にあり、例えばかぜの薬の抗ヒスタミン剤は、くしゃみ・鼻水の症状に効果があるが、眠くなるという副作用がある。
薬には相互作用も。一例として、血圧を下げるベータブロックとぜんそくのテオフィリンは、同じ気管支平滑筋に働き、前者は収縮、後者は拡張という正反対の作用を持つので、一緒に服用するのは避けたい。風邪や膀胱炎になった時に飲む抗菌剤(抗生物質のひとつ)は硬水と飲むと効き目が弱まってしまうが、これは硬水に含まれるナトリウムやマグネシウムなど金属が反応する相互作用のため。
主作用・副作用、相互作用は、薬の性質を理解し、安全に服用するために知っておきたい知識だ。
■薬の効き目は、個人差や服用する時間、薬の加工で違う
・吸収→排泄のプロセスで個人差がある
薬は、体内で吸収→血液濃度→排泄(→血中濃度)というプロセスをたどるが、それぞれのプロセスで、年齢や性別、体質(特異体質)病気の種類(胃痛なら食べ過ぎによるものか、ストレスによるものかなど)が関係し、効き目に違いが出る。とりわけ内臓の機能が低下する高齢者の場合、腎臓や肝臓からの排泄がうまくいかず、作用が強まる傾向がある。
・いつ飲むかで効き目が変わる
薬は、いつ飲むかによって効き目が変わる。「食後」「食間」など服用する時間が決まっているのはそのため。食後って食後何分くらい? 食間って食事の間に飲むの?…迷いがちな「薬を飲む時間」の正しい理解は以下の通り。
「食後」とは食事の後30分以内を指す。胃に負担をかけずに吸収される時間帯で、一般的に食後に飲む薬が多い。
「食前」は、食事の30分前。胃の働きを助けて消化をよくする薬などで見られる。
「食間」は食事と食事の間のことで、食後2時間が目安。
「就寝前」は、文字通り「寝る前」で、睡眠導入剤などに見られる。薬を飲んでから行動し、睡眠導入剤が効いてくると危険なので、必ず布団に入る直前に飲む。
・薬の加工によっても効果が変わる
同じ錠剤の薬でも、製薬会社によって薬の溶けるまでの時間に微妙な違いがあることも。例えばジェネリック医薬品は、先発品と成分的にはまったく同じだが、加工は多少異なるので、薬が効く時間、効果が出る速さに違いが出る傾向にある。
■薬の効き目を高める秘訣
・医師・薬剤師とのよい関係が効き目を高める。
「病は気から」というが、薬を飲む場合も精神的な影響が大きい。医療従事者による十分な説明を受けてから服用すれば、薬の効果が高まってくる。信頼でき、何でも相談できる「かかりつけ医」「かかりつけ薬局」を持つようにしたい。
・薬の効果を理解する
服用する薬について薬剤師の説明をよく聞き、理解できないことは積極的に訊ねる。市販薬の場合、添付されている説明書をよく読み、その薬の主作用や副作用を理解しておくことも必要。
■薬の正しい飲み方を守る
・医師・薬剤師の指示に従い、用法用量を守る。自己判断で量を増減するのはNG。もし、自己判断で1日3回服用する薬を1回しか飲まなかった場合は、強い薬の処方へとつながることがあるので、医師や薬剤師に正直に話すこと。
・薬は、コップ1杯の水かぬるま湯で服用する。外国産のミネラルウォーターは硬水のものがあり、抗菌剤などは相互作用のために効き目が弱くなるので薬と一緒に飲まないこと
。
・アルコールと併用しない。薬は肝臓で排泄されるものもあり、効果に影響が出ることがある。また、コーヒーやお茶に含まれるカフェインも効き目に影響することがあるので、薬の服用に用いないこと。
・薬の使用期限は一般的に2年くらい。市販薬の場合箱などに表示された期限を確認し、期限を過ぎたものは廃棄する。
・薬の副作用について心構えを持つ。
服用後、発疹、発熱、食欲不振、嘔吐、腹痛、ふらつきなど副作用と思われ症状が出たら、すみやかに医師や薬剤師に連絡する。薬が原因で皮膚などに重い副作用が出るスティーブンス・ジョンソン症候群は、市販の風邪薬や解熱剤が原因で起きるケースもあることを知っておきたい。
また、医薬品を適正に使用したにも関わらず、副作用で入院治療や障害などの健康被害を受けた場合は、「医薬品による健康被害救済制度」についても覚えておきたい。
――おくすり講座レポ(2)へ続く