弁護士が語る「介護の世界に裁判は適さない」理由――ハスカップセミナー(2)

市民福祉情報オフィス・ハスカップは、9月25日、介護弁護士・外岡潤さんによる「介護弁護士流 介護トラブルの解決法」と題して、ハスカップ・セミナー2012 No.04を開催した。

介護をめぐって利用者や介護者、事業者や介護スタッフが抱える事故やトラブルは多岐にわたり、解決方法も話し合いでは終わらず、調停や裁判など司法の場に持ち込まれることも多くある。しかし、外岡さんが強く訴えているのは「介護の世界に裁判は適さない」ということ。そのためには、介護版「紛争解決制度(ADR)」による問題解決の道筋を提案している。

3)介護トラブルが元となり、「介護訴訟」にまで発展した場合の実態
示談や調停による和解ができなかった場合、民事訴訟に移行していく。わが国の民事訴訟では、「1ヵ月ごとの書面のやりとりで時間がかかる」「誰でもどんな内容でも提訴できる」「準備書面ではお互いのけなし合い、精神的ストレスが大きい」「慰謝料には相場はあるものの、理屈上は青天井」「原告は勝っても、金銭を得られるだけ(たいていは赤字)。被告の謝罪や反省など、本当に求めるものは得られない」といった特徴がある。しかも、「介護訴訟」というのは、「証拠が膨大」「過失の認定に幅がある」「裁判官は介護の素人」「証人尋問には現場も巻き込んでとことん争われる」「証人尋問は事実上、嘘もつき放題」と、相当の負担が強いられ、納得できる結果が得られるとは限らない。

民事訴訟に発展するケースというのは、金銭目的ではなく、事業者側の事後対応に誠意が見られないことに納得できない利用者家族が裁判を起こすことが多い。しかし、裁判所が損害賠償を課すのは、事故を防ぐ手立てを怠ったために生じた過失であることを立証していくもので、事業者側の謝罪など、事後対応については完全に無視され、利用者家族は納得できない上に、施設側から「やっぱり金目当てだったのか」と思われてしまうこともある。

4)介護トラブルを予防・深刻化させないための方法
高齢化社会が進み、現場はますます余裕がなくなっていく。それに伴って介護トラブルによる裁判が増えると、現場の職員が「できるだけトラブルを避けなくては」といった意識の委縮につながり、社会全体にも影響すると考えられる。そもそも、時間もお金も労力もかかる裁判はできれば避けたいというのが誰もの本音だろう。そこで、介護トラブルを深刻化させないために、裁判の手前で、第三者を交えて話し合える場を民間で作ればいいのではないか。そう考え、裁判外紛争解決機関(ADR)として、「てるかいご(一般社団法人介護トラブル調整センター)」を設立させた。介護トラブルの依頼を受けると、当事者同士では話せないことを調整人(メディエーター)が間に入り「対話」による平和的解決を目指していく。今後は、「介護トラブルは裁判でなく、ADR機関で解決するのが当たり前」と考える社会をつくっていきたい。

「てるかいご」では、メディエーターの養成、メディエーション(対人関係調整スキル)を広める活動も行っている。

◎一般社団法人 介護トラブル調整センター(てるかいご)
◎市民福祉情報オフィス・ハスカップ 

■関連記事
・オフィス・ハスカップセミナー「介護弁護士流 介護トラブルの解決法」(1)

介護食の基礎知識

介護のキホン

介護シーン別に基礎を知る

みんなが注目する基礎知識

要介護度とは?

要介護度とは?

介護度は7段階に分かれていて、要支援1・2、要介...

介護度別ケアプラン事例

介護度別ケアプラン事例

<要支援1>支給限度額49,700円、自己負担額...

デイサービス(通所介護)の選び方

デイサービス(通所介護)の選び方

デイサービスは曜日によって利用者が異なり、雰囲気...

家族で話し合おう

家族で話し合おう

家族で話し合おう...

介護用語を調べる

頭文字から探す

 
 
     
 
         
A B C D E F G H I J K
L M N O P Q R S T U V
W X Y Z              

キーワードから探す

このページのトップへ