イーライリリー・アンド・カンパニーは、アルツハイマー型認知症の正確な診断に関する課題への取り組み方及び意識を評価した、「アルツハイマー型認知症に関する国際医師意識調査」の結果を、9月19日発表した。
この調査は約1,000名の医師を対象に、「世界アルツハイマーデー(9月21日)」 に向け、同社の依頼により、アデルフィ・リサーチが米国、英国、フランス、イタリアおよび日本の5カ国で実施したもの。
調査結果によると、調査に参加した5カ国の医師の半数近く(45%)が、アルツハイマー型認知症について「誤診がしばしばある」と回答。また、約半数(48%) が、アルツハイマー型認知症の診断時期は、効果的な介入を行うには「常に」あるいは「しばしば」遅すぎると回答した。また、アルツハイマー型認知症の正確な診断に影響する最も一般的な課題として医師が挙げた点は、正確な診断のための検査方法や、患者および介護者と医師間のコミュニケーションが十分ではないこと、また、患者自身が疾患を受容し難いこと、だった。
さらに、アルツハイマー型認知症の早期診断には、様々なメリットがあると医師が考えていることが明らかになった。例えば、「症状が悪化する前に機能障害や認知機能の低下を抑制するため、できる限り早く治療を始められる」、「将来に向けた調整と準備のため患者と介護者がより多くの時間を確保できる」といった点。特に2番目の点は、米国(85%)及び英国(83%)の医師が最重要事項として挙げている。一方で、早期診断のデメリットとして、「患者・介護者にとっては不治の病とされる認知症の告知になる」や「家族や友人から孤立する可能性」等が示されている。
【正確な診断への課題】
■正確な診断のための検査方法の不足
アルツハイマー型認知症の正確な診断を下すために利用できるツールに関して、大半の医師の回答は「まあまあ満足している」(57%)だった。適切な診断を行う上での最大の課題として、「正確な診断のための検査方法の不足」(65%)が全ての国の調査参加医師から挙げられた。
■コミュニケーションの不足
調査に参加した医師の75%は、アルツハイマー型認知症についての話し合いは、患者と介護者主導で行われたと回答した。また、そのうちの44%は、患者・介護者が話すのは、「アルツハイマー型認知症を疑い始めて、しばらくたってから」と回答した。また医師の約40%は、正確な診断を下すために必要な情報が、患者・介護者から十分には得られなかったと回答。一方、臨床的なエビデンスが十分ではない中で、より早期に正確な診断を下すためにはどのような情報が必要であるかという点については、症状の種類と現れた期間、及び日常生活への影響の程度、機能低下の進行状況、および家族歴等の情報が役立つと回答している。
■疾患の受容の難しさと、誤解や偏見
医師が患者にアルツハイマー型認知症の診断を告知する際の難しさとして、「患者が疾患を受け入れられない」(65%)、「社会的な誤解や偏見」(59%)が挙げられた。また、大半の医師(71%)がアルツハイマー型認知症について、少なくとも、ある程度の誤解や偏見があると回答し、英国およびフランスでは最も偏見が強い(81%)という結果が示された。さらに調査に参加した医師によると、「個人の自由が奪われること」(78%)、「恥ずかしいことだと思うこと」(63%)、「社会的に孤立する可能性」 (60%)が、患者および介護者から共通して挙げられた誤解や偏見だった。
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