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施設で食中毒が発生した場合の対処法は？――東京都セミナーレポ

東京都福祉保健局は、9月19日、「あなたも感染源に!?　〜ポイントをおさえて予防しよう！ノロウイルス食中毒〜」と題したセミナーを開催した。

基調講演では、東京都健康安全研究センター微生物部ウイルス研究科長の林志直氏が「ノロウイルスってどんなもの？」をテーマに、ノロウイルスに関する説明、都内における食中毒の発生状況、予防方法について説明した。

ノロウイルスは、人に胃腸炎を起こす主なウイルスの一つ。他のウイルスは乳幼児で発症しやすいものの、ノロウイルスの場合、全年齢で発症しやすい。
ノロウイルスに感染すると、24〜48時間で吐き気、嘔吐、発熱、吹く熱、下痢などの症状が現われる。また、ウイルスは1週間程度、ふん便とともに排出される。感染経路は、ノロウイルスに汚染された食品を食べて感染するという食べ物によるものか、感染した人のふん便や嘔吐物を介して他の人へ感染するという人によるもの。

「都内では、毎年100件から150件の食中毒が起きています」と林氏。食中毒のなかでも、例年、最も多いのがノロウイルスによる食中毒だ。
また、林氏は、施設別の集団発生報告数の推移も紹介。図を見ると、以前は高齢者施設での発生が最も多かったものの、近年、保育園・幼稚園での発生の方が増えていることがわかる。その理由については、「高齢者施設で流行するウイルスの型とお子さんの施設で流行するウイルスの型は異なります。高齢者施設での食中毒で検出されるのがG?-4という型で、最近では減少しています」と説明した。

林氏は最後に予防方法についても言及し、手洗いの徹底が重要であることを訴えた。手洗い実験では、手洗いをしなかった場合に比べて、15秒水ですすいだだけでも、ウイルス遺伝子量は100分の1程度になり、ハンドソープを使うとさらに減少効果がみられた。

パネルディスカッションで登壇した杉並区杉並保健所食品衛生監視員の谷口力也氏は、実際にあった事例として、有料老人ホームで発生した食中毒事件を紹介した。

概要は次のとおりだ。

1月8日16時ころ、有料老人ホーム施設長から区役所を通して杉並保健所に連絡。下痢、嘔吐などの症状を呈し、ノロウイルスによる感染が疑われる人が複数名いることが報告された。
この施設は、1階は要介護者と自立者、2階は要介護者、3階は自立者とフロアが分かれている。階ごとに発生者の偏りはなく、食中毒発生前に利用者が一堂に会するようなイベントもなく、食事は施設内の給食施設でつくられたもののみだった。
報告の電話を受けた担当者は、感染者の拡大を防ぐために、以下のことを指導した。

【入居者対策】
・患者の発生状況、症状に注意すること
・患者の容態については担当医師と相談すること
・患者と入居者、職員の接触感染に注意すること
　（→「過去に職員がフロアをまたいで、感染を広げたケースがあった」とのこと）
・患者が利用した共有施設（浴室、食堂、廊下など）、トイレ、居室などの消毒を行うこと
【給食施設関係】
・調理関係施設、設備を消毒すること
・料理人の体調変化に注意すること
・調理使用水の安全を確認すること
・給食の外部委託の手配に関する連絡確認
　→食中毒と決定されれば、一定期間、営業が停止されるため、代替食を用意する必要がある。「リスクマネジメントの一環として日頃から検討しておいてほしい」と指摘。

その後、施設のふき取り調査を行ったところ、調理関係者専用のトイレの床、便器の内側からノロウイルスが発見された。さらに職員や利用者にヒアリングを行った結果、問題とされる朝食が出された日、一人の調理従事者が、朝、自宅で嘔吐した後出勤し、調理作業を行っていたことがわかった。

谷口氏は、この事例に対して、「個人の食品衛生知識の欠如」「個人衛生点検票の記録が形骸化していた」「職場のローテーション体制の不備」といった問題点を指摘。また、自宅で嘔吐した際にウイルスが舞い上がり、手などに付着したものと思われるため、「手洗いを徹底していれば防げただろう」とも話した。

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