慶應義塾大学医学部神経内科の研究グループは、同老年内科と共同で、アルツハイマー病やパーキンソン病をはじめとする神経難病や老化研究に取り組んでいる。
アルツハイマー病やパーキンソン病は、いずれも頻度の高い高齢者疾患で根本的治療法のない難治性疾患。その発症には老化が関与していることはわかっているが、正確なメカニズムはいまだ不明とされている。
今回、同大学の研究グループは、生前重篤な疾患がなく極めて健康な老後を過ごした百寿者(105歳以上の2例)の死亡後の皮膚の細胞から、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製し、さらにパーキンソン病で脱落するドーパミン細胞への誘導に成功した。
さらにアルツハイマー病、パーキンソン病由来の細胞では百寿者細胞と比較して病気に関連しているβアミロイドやαシヌクレインの産生を2倍近く産生していることを見出し、高齢発症の神経難病では発生の初期から病態異常があることが示された。
これまで、本研究グループを含めいくつかの研究グループで疾患iPS細胞が樹立されているが、重篤な疾患が否定された基準となるiPS 細胞がなかった。今回の研究により樹立されたこの百寿者iPS細胞は、理想的な正常iPS細胞(スーパーコントロール)となり疾患iPS細胞を組み合わせることにより老化研究、疾患研究だけでなく発症前の診断や予防治療薬の開発などに利用可能で、先制医療への展開に期待されている。