医薬品の輸入・開発・製造・販売を行う日本イーライリリー株式会社は、高齢の母親をもつ45歳から60歳代の女性4,700名を対象に、母親の健康と介護に関するインターネット調査を実施した。
調査の結果から、高齢社会の進展に伴い、介護予防の重要性はますます高まっているが、介護につながる要因についての認識や予防対策は、高齢の母親を持つ娘世代でも不十分な実態が明らかになった。
調査結果について、高齢者骨折の予防と治療の専門家の鳥取大学医学部保健学科の萩野浩教授は、「現在、『転倒・骨折』は介護原因の上位を占めており、一度背骨を骨折すると、次の骨折リスクが高まることは医学的なデータで証明されている。母親の腰痛や腰の湾曲に気がついたら早期に専門医の診断を受けるようすすめることが重要」と語っている。
【調査の概要】
■調査対象:高齢の母親をもつ全国の45〜60代の女性
■調査手法:インターネット調査
■有効回答数:4,700名(47都道府県各100名)
■調査時期:2012年6月9日〜6月10日
主な調査の結果は以下の通り。
■娘の約4割が、母親が「腰痛」を抱えていることを認識
母親が訴えている「痛み」の症状を聞いたところ、最も多い回答は「手足の関節」(38.1%)、次いで「腰」(33.0%)となった。「背中」と答えた人も1割弱(9.0%)おり、「腰」と「背中」を合わせた約4割(35.1%:1,650名)の母親が娘に「腰痛」を訴えていることが分かった。
■7割以上が腰痛の原因に「骨折の恐れがあることを知らない」
原因として最も多くあげられたのは「年齢(高齢だから)」(68.6%)。次いで 「普段の姿勢の影響」(43.9%)、「血行不良」(43.9%)で、高齢の母親をもつ娘の7割以上(73.6%)は、高齢者の腰痛の原因に「骨折」の可能性があることを知らないことが明らかになった。
■腰の曲がりや身長低下と「骨折」の関連を認識していないのは9割
また、高齢の母親に、「背中・腰の曲がり」「身長の縮み」いずれかがあるとした娘(67.8%:3,187名)に、 母親のその姿勢・外見の変化の原因として考えられることについてたずねたところ、「年齢(高齢者だから)」(77.6%)との回答が最も多かった。「骨折」の可能性があると考える娘は1割未満(4.2%)で あり、9割以上(95.8%)が骨折リスクについて認識していないことがわかった。
腰痛や、背中・腰の曲がり、身長の低下は、骨粗鬆症による椎体骨折の可能性があり、女性高齢者では特に注意が必要。しかし、高齢の母親をもつ娘の大半が単に「年のせい」と考えており、骨折が見過ごされる危険性が示唆された。
■母親の介護での気がかりなのは、自分自身のこと
予防の対応策として、約半数は「医者にかかること」をすすめているが、「病院に付き添う」「具体的な情報を提供する」と回答したのは少数。高齢の母親の介護をすることになった場合に気がかりなのは、「自分の生活スタイルへの影響」(60.9%)、「精神的な負担」(58.1%)、「経済的な負担」(45.6%)、「自分の自由な時間がなくなる」(40.3%)など自分自身についてのことだった。
一方、実際に介護予防のために実施していることは「医師に診てもらうことをすすめる」という以外には、積極的な情報収集やアクションは起こせておらず、「特に何もしていない」と回答した人も4人に1人の割合でみられた。
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