株式会社オヤノコトネットは、7月14日(土)・15日(日)、東京・有楽町にて「第5回オヤノコト.エキスポ」を開催した。
「オヤノコト」世代とは、高齢の親のことが気になる40〜50歳代のこと。
年に一度の「オヤノコト.エキスポ」では、親世代に役立つ最新の商品やサービスを展示するほか、シニアの暮らしや健康について知識を深められるセミナーを開催。5回目の開催となった今年も多くの来場者でにぎわった。
多彩な講師陣によるセミナーの中から一部を紹介する。
会場内に設けられたミニステージで、14日の午後12時から1時間にわたって行われたのが、社会福祉法人浴風会ケアスクール校長の服部安子氏による「認知症介護と家族ケア」。
浴風会ケアスクールでは、認知症介護研修をはじめとする研修事業や介護ヘルパー養成事業を手がけるほか、認知症患者の家族を支援する取り組みも行っている。認知症患者とその家族のケアに精通した服部氏が、認知症の特徴やケアの注意点、家族へのアドバイスを一般聴衆に向けてわかりやすく解説した。
セミナーの冒頭で、「認知症は物忘れではなく、脳の病気」と説き起こし、認知症はどういう病気で、どのような症状があるかを解説した。
認知症による記憶の低下や認知の障害については、「説明したり説得したりするのは逆効果」と家族がやりがちな間違いを指摘。レビー小体型認知症やピック病についての解説では、「テレビなどでよく取り上げられるアルツハイマー型の特徴にとらわれてしまい、それ以外の認知症を見逃すことがないように」と、アルツハイマー型認知症が広く知られるようになった今だからこその説明もあった。
講演を通して軸となったのが認知症の早期発見の重要性。早期発見することで、家族が認知症という病気について心構えを持つことができ、ケアに活かすことができるからだ。
「この病気は、『薬2割・ケア8割』と言われており、現場での経験からもそれを実感します。ケアが適切でないと、要介護1程度の人もあっという間に症状が進んでしまう。また、介護する家族に知っておいてほしいのは、認知障害などが進んでも心は生きているということ。上から目線の対応は患者の心を傷つけてしまいます。ケアのポイントは『受容』です」
介護する家族の心情に理解をうながす説明も。たとえば、デイサービス。ケアマネジャーにすすめられて利用するようになり、最初はいやがっていた本人が何とかなじんで通うようになっても、家族には「お父さんが子どものようなことをさせられている」という気持ちが残ることも。
服部氏は、家族に介護のために、仕事をやめるか否かを相談された時は、介護離職はすすめないという。「先が見えない介護に専念することで、逆に煮詰まってしまう」からだ。
服部氏が家族に伝えているのは、「楽しく、明るく接しようとしてムリをする必要はない」ということ。
「認知症患者に明るく接するのは、プロの介護職にまかせて。家族に求められるのは、理屈で説得しようとせず、間違った言動も受け入れること。患者の言動に感情的になった時は、その場を離れることをおすすめします」とのアドバイスもなされた。
家族が認知症になった時、介護者の心の葛藤や負担をどのようにして軽減するか。わかりやすく、勘所を抑えた講演には改めて学ばされることも多く、認知症理解へとつながるものとなった。